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【連載】家族会議『子供の進路を決めるとき』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議4日目#5|子供の進路を決めるとき
――父は工業高校出身。でも本当は、違う高校に行きたかったのだという。そしてその先は大学へ…というのが本来の希望だった。高卒であることを、ずっと引け目に感じてきたのだと思う。
そうは言っても、高校にさえ行けるかどうか。その瀬戸際に立たされていた父は、高校に進学させてもらえただけでありがたかった。父親に「工業高校に行け」と言われれば、それ以上を望むことなどできなかったのだ。
母:大学のことまで考えてたなんて知らなかったな。わたしは大学なんて考えたこともないし。
わたし:お父さんの場合は兄弟が大学に行ってるわけでしょ。だからその先があるって知ってるもんね。
家庭の事情も実際のところは知らないわけだし。ちょっと無理そうと感じつつも、何とかなったりするのかな?っていう感覚もあるよね。きっと。
母:お父さんが、大学っていうことが頭にあった。あったなら、泉が大学の話をしたとき、お父さんはどんな感じだったんだろうかと思って。
私は考えたこともなかった。大学あるのは知ってたけど、行くなんてことは全く頭になかったから。
――わたしは大学へ進学せず、高卒で就職した。
親には、お金が厳しいとか、地元の短大なら行かせてやってもいいとか言われ、希望しない短大に行く意味もわからなかったから諦めたのだった。
それに、あのとき親から感じていたのは、お金をかけて娘を大学にまで行かせるのは「費用対効果が低い」ということ。希望する大学に行ったとしても、将来の役に立たないと言われていたのだ。
しかし今回、別の理由が真実だと、父が話し始めた。
父:いやあのね、泉が大学っていうのはさ。間違った考えなんだけど、お姉ちゃんは行かないって言ったんだ。お姉ちゃんが行ってれば多分出したと思う。なんかね、平等というか同じにしてあげようと。いう思いが心の底にはあったな。
わたし:なんかその理由もさ、聞くたびに違うことを言われたりする。今のも何回も聞いてるけど。
父:心の底。
わたし:それが心の底なんだね。当時はそんなこと、もちろん言われてないし、なんか納得感のない理由で言われて「はいはい」って感じだった。
だからさぁ、もう進路を決めなきゃいけないときなわけだから、もうちょっと子供を信用して大人として扱ってもいいよね。だって、そこで選択したらもう社会に出るんだから。
うちの事情とか、泉だけ行かせるとお姉ちゃんが嫌な気持ちになるかもって躊躇する気持ちがあるとか。親として隠したがるのもわかるけど、きちんと話すことが大事だったんだろうね。
父:なんか怖かった。
わたし:とにかくコミュニケーション不足だよね、親子間でも。
父:そうだよなぁ。
わたし:その辺がやっぱり、有無を言わさず押さえつけるみたいな教育の印象でしかないんだよね。
いろいろ考えてくれてたのかもしんないけど、わかんないし。なんか本当の理由じゃない最もらしい理由を言ってきて、有無を言わせない状態にさせられるっていうのは、やっぱり気持ちをないがしろにしてるってことだよね。
父:そうだなぁ
母:自分たちの都合で押さえつけて…。
――大学に行かせてもらえなかったことを、いつまでも責めたいわけじゃない。でも理由がコロコロ変わり、まったく筋が通ってないことに腹が立つのだ。
姉が大学に行っていればわたしのことも行かせた。というのは、当時短大ならいいと言ってたことと矛盾する。
本当は、「女は結婚して養ってもらえばいいから大学など行く必要ない」というのが心の底なんじゃないかと、わたしは思ってしまう。
わたし:まぁ、わたしもそうだったけど、お父さんもお母さんも親に気持ちを汲んでもらってないんだろうから。お父さんは高校には行かせてもらえたけど、希望までは聞いてもらえなかったわけだし。だから何ていうか、希望を聞いたっていいよね。って思う。
母:そうだよね
わたし:排除するんじゃなくて。行く行かない別にして希望を1回聞く。そして検討する。そういうのがすごく大事なんだよね。
母:希望が通らないとしてもね。
わたし:そうそう。そういうのが、わだかまりを残さないってことになるんだと思う。それは子供のことだけじゃなくて、夫婦間も同じだと思うんだよ。
何かを決めるときに、片方が「こうだ!」って押し進めていくんじゃなくて、一旦お互いの気持ちを出し合ってさ。どっちが正しいとかないわけだから。
いろんな状況も踏まえて「どっちがいいかな」って話し合うことで、「あのときこうしてくれなかった」みたいなわだかまりを残さないのが大事なんだよね。
――子供のことも日常のことも、夫婦や親子で本音を話し検討する。それが当たり前のようにできる家庭もあれば、できない家庭もある。
できない家庭は、そもそも「個人を尊重する」という考え自体がないから、子供の進路だって親の一存で決まってしまう。子供の将来のためと言いながら、親の理想を押し付けていないだろうか…。
- 今日はここまで -
私の年の離れた従兄は、自分の娘の高卒後の進路に対し、まず親の希望を語ったそうだ。親としてはこういう思いがあると。その上で、自分の将来だから自分で決めなさいと、選択を任せたという。結果、その娘は自分が希望する道に進むことを決めた。
私は従兄からこの話を聞いたとき、素直に「うらやましい」と思った。
親には親の理想がある。子供には子供の希望がある。それを腹を割って話せたなら、どんなに良いだろう。
そうやって進路を選択する体験こそが、子供を自立させる第一歩になると思う。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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