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【連載】家族会議『押しつけの浪花節』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
家族会議7日目#3|押しつけの浪花節
わたし:
そしたらあれだね。お母さんの話聞く?
母:
私お父さんの話聞きたいんだけど。質問があるの。いい?
父:
どうぞ。
母:
さっきお父さんが、自分は浪花節だって言ったじゃん?
父:
うん。
母:
あれってどんな感じか、もうちょっと教えてくれると。どんな感じのことを言ってるのかよくわかんないんだけど。
父:
人情味っていうかね、そういう感じに捉えてんだけど。
母:
人情があるってことね?
父:
例えばさ、鹿島に渡辺っていうのがいたじゃん?あれが会社辞めるって出てこなくなったわけよ。
俺、家の前に立っているのに居留守使ってるからさ、ずっと待ってたんだ。出てくるのを。それ3日くらいやったかな。
したら(同僚に)、「そんなとこまでやらなくていいんじゃない?」と。「もうほっときゃいいんじゃない」と。それもそうだけどと。
辞めて何すんだ?って。したら花屋やるっちゅうわけよ。ちょっと待てと。花屋で将来生計立てるのかと。あまり考えてませんって言うから。で、ここが嫌だったらよそに出してやるから。どうなんだ?っつったら、嫌ですって。
母:
会社を辞めたいってこと?嫌ですっていうのは。
父:
うん。あ、嫌ですはここにいるのが嫌です。で、あれ福島の方に移したんだわ。最終的には福島原発云々あるから、仙台に行ってんだけど。
母:
原発云々っていうのは、事故があってからの話を言ってんの?
父:
あそこでもう生活できないから。事務所があったんだけど、原発の原子力なんか点検するのにあそこにいるわけ。常駐で。鹿島みたいに。それができなくなったから仙台に。
母:
できなくなったってのはどういうこと?
父:
なんで?あそこで生活できないのに。
母:
地震が起きてからの話?
父:
そうそう。
わたし:
だいぶわかりづらい話し方だね。
父:
そう?
――説明がへたくそ。問いに素直に答えないのが父の特徴だ。
父:
一番言いたいのは、やっぱ鹿島なんだわ。お前(母)が何か変な質問したからそっちの方に飛んで言ったんだけど。
――人のせいにするのも父の特徴である。
母:
はいはいどうぞ。
父:
鹿島に行ってたときに、要するにそういうような人だから何とかしてあげようと思って。それで、家を張り込んで。
母:
そういうような人ってどういうような人?
父:
だから!今喋ったような人だからよ(イライラ)。チッ(舌打ち)。
わたし:
いやちょっと、そこで怒っちゃうところが上から目線だと思うわ。笑
もうちょっとわかりやすく話してって感じだよ。
――話が伝わらないとイライラしだす。自分の説明下手は棚に上げて。
父:
あの人は、何ていうのかな、折れそうなんだよ。仕事嫌だってなったらポキーンってさ。やっぱ誰だって鹿島でやりたいと思わない。俺も折れそうだったから。
そういうのを阻止しようと思ってあの人に手厚く対応したんですよ。同僚から、「そこまでやる必要はないんじゃない」と言われるくらいに。
一応拾ってあげたなと。普通の人だったらやらないと思う。そこまで。同じ会社で別なところに配置転換して、拾ってあげたっていうのはちょっとないんじゃないか。
母:
その後渡辺さんは仕事は続けてるわけ?
父:
続けて、ずっと。もうまもなく定年だから。
わたし:
そういうところが浪花節って言われるってこと?
父:
そういうところがチョロチョロ出てるんじゃないでしょうか?
大阪でも残業してたら、その人間が帰ってくるまでずっといたんだわ。で帰ってきたら、ご苦労さん。じゃ一緒に飲みに行こうかって。一杯飲んでから帰ると。いうようなことをよくやってたから。
母:
人のことを気にしてた。
父:
だから、よく言えばね、そういうことやるんだけど。あまり目のかけてない人にはそこまでやらないんだよな。全員にやってるわけじゃないわけで。
母:
全員にやってるわけじゃないんだ。
父:
全員にやると体もたねーわ。
なんていうか、目を付けた人間ね。いいなと目をつけた人間には結構やってたと思いますよ。
わたし:
面倒見がいいってことだね。そういうところがあるのがお父さんだったってことだね。そういう意味ではドライではないよね。
父:
だけどこっち(目をかけていない人)の人に対してドライかも知れないな。
わたし:
そういう人、浪花節じゃないんじゃない?と思ちゃう。なんか浪花節の人は誰にでも人情あふれるみたいな?
父:
ちょっと違うか。言葉選択が間違えました。
わたし:
でも言われてたんでしょ?お父さんが言ったんじゃなくて、浪花節って言われてたってことだよね?
父:
うん。
わたし:
だから見る人からは、そう見えた。お父さんと仲良くしてた人には浪花節だったってことかもね。なんかときにはドライで、ときには浪花節で。
やるってなったらとことんみたいなところが浪花節なのかな?3日間張り込んでみたりとかさ。
母:
なんか私、張り込んでるってのはそのとき聞いて知ってるけど、なんかしつこい感じとか、なんか人のプライバシーじゃないけど、何でそこまで、何でそんなことするのかな?みたいな感じに思ってた。
その人の将来を考えて、会社辞めないようにしてあげようっていう、そんな気持ちだとはわからなかった。なんかもう、何か言ってやろうって怒ってんのかな?って。
父:
鹿島にいたとき渡辺は演劇グループに入ってて、奥さんがそこのグループの人じゃないかな?一緒になってそっちにのめり込んで。
会社の仕事がおろそかになってたんだよ。結構前から辞める気でいたのかな?あれ。
――母の言葉に否定をしない父は、やっぱり怒ってたんじゃないかと思う。「仕事をおろそかにしたうえに、急に辞めるなんてふざけるな」と。だから執念深く3日間も張り込んだのではないか。
そもそも父は、渡辺さんを「そういうような人」と評価しているわけで、演劇や花屋やりたいって言っている人は、どうしようもない人だと思っているわけで。
そんな偏見や見下しがあったから、渡辺さんは辞めたかったのかもしれないし。
わたし:
まあ、定年まで勤め上げるっていうことだから、渡辺さんにとっては、そのときお父さんに助言してもらって手配してもらったことがプラスになったんだなって思うけど、人によってはさ、結構強引っていうか。3日間外で待つとか。
ちょっとおせっかいにも見える。いい方に転んだんだなって。だからよかったなって思うけど。
父:
本当そうだわ。
わたし:
だからお父さん、結構自分の思いで突っ走るところがあるんだよね。
父:
みんなそれ言うわ。
わたし:
ってことだよね。
「こいつのために絶対この方がいいんだから」っていうので動く。結果的に渡辺さんにとっても良かったのかもしれないって思うけど、ちょっとお節介。でも面倒見がいい。短所はお節介みたいなことかな。
母:
わたしが捉えたのは、ストーカーっぽいことの方に捉えてた。そんなことしていいの?って。ちょっと何か、お父さんの恨みか何か晴らすとか、そういう。腹立ってとか。
父:
そんなの初めて聞いた。
母:
ごめんね。悪くとってたわ。
でもお父さんがそんな気持ちっていうのは知らなかった。この話は何回か言われたけど、ちょっと何か怒ってんのかな?みたいな感じだったから。
わたし:
やっぱその当時に、話が足りなかったんだろうね。2人の間で。
お父さんとしては、「会社の内情とか詳しく言ったってどうせわかんないんだから」って感じでやってることだけ。それによって家に帰るの遅くなったりするかもしれないから、家に関わる部分だけ言ったりする。のかもしれないけど。
でも渡辺さんもどう捉えるかわかんないし、それをやってる周りの人がどう見るかもわかんない。
「人情味あるね」って言ってくれる人もいれば、お母さんみたいに「ちょっと大丈夫なのかな」みたいに心配しちゃう人、わたしみたいに「めっちゃお節介だね」みたいに思う人もいる。
だからどんな思いでやってるのかっていうのを、言うと誤解が生まれなかったってことだよね。
――父には人情味がある部分もある。退職後の今も、筍の時期に筍を持ってきてくれる人、スイカを持ってきてくれる人、入院したときにわざわざ会いに来てくれた人がいた。父を慕って。
恩着せがましくとも、それに救われた人も確かにいたのだ。
でも、父の価値観の範囲内に居る人には感じられる人情味も、それ以外の人には感じられない。むしろ心無い人すら見える。
父にとって家族は、父の価値観の枠外の人間なのだろうな。こういう人の辞書に、「多様性」など載っていないだろう。
- 今日はここまで -
浪花節は、義理人情を重んじることだ。
父の場合、義理を大切にするところが確かにある。けど人情はあまり感じられない。渡辺さんに対しても、渡辺さんのことを思ってというよりも、父の思いを押し付けただけ。
それがたまたまハマっただけなのだろう。
家族に対しても同じである。
わたしたちの場合、父の義理立ては何ひとつハマらない。むしろ、狭い価値観で一方的に押し付けられる義理に、苦しんでいる。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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