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【連載】家族会議『なにに怒っているのか』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。

【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。

家族会議32回目#3|なにに怒っているのか

この日は母とふたりで家族会議をしている。

テーマは、母と父の関係性の振り返り。

記憶をたどり、いつから父に怒りだしたのか?なにに怒っているのか?を探っている。

前回の記事はこちら。

はっきり自覚していなかったけど、母は父に対し、結婚当初から怒っていた。

なにに怒っていたのか。なにが嫌だったのか。その具体例を挙げている続きから。



あとは、お姉ちゃんが小学校入ってからだと思うけど、机の上が散らかってて、「 片付けろ!」って怒りながら、バーッとやったのは、すごい嫌な感じだった。

わたし
うんうん。わたしもそれ覚えてる。


――父に直接手をあげられたことはない。父は、物にあたるタイプだ。

そんな父を虐待という視点で語ろうとするとき、暴力をふるわれていないために「虐待だ」と言い切れないところがある。物にあたるのも怒鳴るのも、毎日ではないし、一緒に遊んでくれたこともある。毎日のように暴力をふるわれる家庭と比べたら、わたしたちなんて「この程度で騒いですみません」とでも言いたくなる。

だけど、一度怒鳴れば、一度物を投げつければ、恐怖を植え付けるのには十分だ。父はそうやって、わたしたちを恐怖で支配してきた。



そのとき自分はどうしたんだろうと思ったら、なんかそういうことに、はぁーみたいな感じで、お姉ちゃんをフォローするでもなかったような気がするんだよね。

わたし
うん。


あとはお姉ちゃんのことで言えば、お風呂入るのに洗面所で服脱いで、お風呂からあがってもまだ片付いてなかったりするじゃん。その次にお父さんが入るときに「邪魔だーっ!」って言って床に投げつけたなぁ。なんか、すごい嫌だなって。嫌だなどころじゃなくて‥‥お姉ちゃんとしては、ちょっと今、言葉にできないけど、ショックとか、お姉ちゃん自身がそうやられたわけじゃないけど、何だかそんな気分にもなるよなって。そういうの。

あとは、お姉ちゃんの躾とかそういうことで、何かうまくいかないときにお父さんに相談っていうか、「お姉ちゃんがこうなんだよ」って愚痴っぽく言ったときに、お母さんと2人だけのときだけど、「 どいつもこいつも気に入らねぇ!」って言った言葉っていうのが、お母さんとしては、なんていうかそういう言葉が、積もっていくっていうか‥‥。

わたし
うん。


あとは、お父さんがよその家に呼ばれて行くと、みんなよその子は寝てるって。だから「もっと早く寝せろ」とか、何かそういう。あとは夜泣きがうるさいから「あっちに連れて行け」とか。夜寝てて。

わたし
うん‥‥。


あと、よく言われて嫌だったのは「お前は素直じゃない」って、よく言われたのね。その素直って、今になって思うと、お父さんの考えてる素直は何でも「はいはい」って。よく「俺が言ったことにすぐはいって言わないんだな」みたいなことも言ってたから、そういう意味で素直じゃないって言ってるんだなって思うんだけど。

わたし
それ素直とは、ちょっと意味が違うもんね。


――父が母に求めていたのは、イエスマンということだ。

そうそう。父は、自分の身勝手な都合を、さも相手の落ち度かのような言葉や状況に変換する能力に長けている。「黙って言うことを聞け」と言いたいところを「素直じゃない」と言ってみたり、単に仕事でストレスが溜まってイライラしているところを「片付けろ」と物を投げつけて暴れてみたり。



でもそんときは、自分の思ってる素直のイメージで捉えたりしてたから

わたし
全然かみ合わないよね。


あと何かっていうと仕事が忙しい。仕事だ。 仕事だ仕事だっていうので、先延ばししてたこととか。何かそういういろんなことがあって、なんかどんどんどんどん、不信感やら‥‥。あとは馬鹿にするようになっていったな。

もう勝手に妄想もするし。例えば、岩手に行ったときだけが休まるときなんだって言ってるけど、「お義母さんの顔見に行きたいだけでしょ」みたいな。心の中でそんなふうに思ったりとか。

わたし
うんうん。


そんなふうになってったな。 それがずっと続いてるって感じかな。 こんなことをお父さんが言ってるときは、お母さんもなんか言ってると思うけど。一方的じゃなく喧嘩の中で言ってるって感じだったけど。

あとはそういう中で、泉のこととお姉ちゃんのことがあったときに、そのときも2人で何か一緒に考えたり、話し合いとかしたいなって思ったけど、喧嘩になってばっかりだったな。

わたし
うん‥‥。


――父はいつも、「仕事だ」を切り札として使っていた。「俺が働かなかったらお前たちはどうやって生活するんだ」という脅しである。

だから母は、父が定年退職するまで待っていた。長い間。だけど結局、「仕事だ」は言い訳に過ぎなかったことが、明らかになってしまったのだ。



とにかく、それで今に至るかな。お父さんも、そのときそのときで何かあると思うけど。

わたし
うんうん。


そういう感じだな。

だからそれを、それはそれで出したとして。じゃあ、お父さんの良いことは?って考えてみたの。でも、出てこなかった。出たのは本当に申し訳程度のあれだけで、家族がうるさいからとりあえず家族会議‥‥をしてるってことは、まあいいことかな。

わたし
うんうん。


と思う。けど、家族がうるさいからとりあえずでしょ?みたいなところに行っちゃうし。

料理もしてくれてる。でもなんだろ。なんかとりあえずでしょみたいな。なんかその言葉ばかり出てきちゃう。掃除もしてくれるけど、とりあえずしてるんでしょみたいな。でも、今までのお父さんからすると、とりあえずやってるだけでもすごいのかなと思う。


――父は料理をしたり、掃除をしたり、洗濯をしたりする。定年後は、それを積極的にやろうとしているところがある。だけどその目的は、「褒められるため・認められるため」だから、褒めてやらないと不平不満がでる。めんどうくさい。

しかもこれらは、父がやれる範囲の内容である。「家族に向き合って欲しい」と求めても、めんどくさいものには応じない。父ができるのは、家族会議の席につくところまで。自分ができるもの、やりたいと思えるものだけをつまみ食いしては、「俺はやってる」と偉そうだ。

それどころか、今度は家事を理由に「忙しい」と言い出す始末。


父の良いところを探そうとしたとき、でてくるのは「他と比べるとマシ」という部分になる。人と比べないと良いところが出てこない人ってどうなの?って思う。わたしたちの理想が高いのか、父の人間性が低すぎるのか‥‥。



あとは大きな声を出さないように注意してるっていうのも何となくわかる。

コミュニケーションが何故必要かはよくわからないけど、とりあえず努力してる。みたいな、なんかこんな感じしかいいところが出てこなくて。

わたし
うんうん。実際そうだと思う。 

結局、お母さんがずっと求め続けてるのはコミュニケーションなわけで。昔、一方的に押し付けてきたり上から目線で物を言われたり、自己中心的で傍若無人っていうか、結構ひどい人だったわけじゃん? それは確かに、だいぶ丸くなってきてるのかなとは思うけど。

でも、ずっと求めてたのはコミュニケーションで、気持ちをわかってもらいたいっていうのが一番の願い。だけど結局、家族会議とかいろいろやってくれてるけど表面上で、一番重要なところでコミュニケーション取れないし、気持ちもわかってもらえない。 その状態で形ばかり見せられても、素直には受け取れないよねって思う。


そっか。最近になって上から目線だったとか。っていうのがわかって、それであんな言葉言ったわけねっていうのは、今になるとわかるって感じだし、昔の子供時代の、父親との間のことからして、それでそうなんだなっていうところは、少しはわかってきた。けど、でも嫌なこと言われたのは確かだしっていうか。

いろいろお父さん側にも理由があったんだなっていうのは何となくわかってきたけども。って感じだね。

わたし
うん。そうだね‥‥


――今思えば、父側の事情を考慮する必要ってなかったのかもしれない。わたしたちは、感じたことを感じたままに伝えるだけで良かったのかもしれない。それで話が通じなければそれまで。と切り捨てても。

まあだけど、自分の本心すらわからない父がいて、父の本心がわかってしまうわたしがいて、父に共感できる姉がいて、父と心から繋がりたい母がいる。まるで、父を救うために構成されたかのような家族なのに、父を見捨ててよいのか、という葛藤がある。

事情があることがわかっていて、それを考慮せずにはいられない。

だけど、その事情を認められないのが父である。父が自分の事情を認めない限り、わたしたちの愛は伝わらないし、父が家族の愛情を感じ取ることもない。

父が変わるしかないけど、父を変えることはできないという‥‥もどかしさ。


― 今日はここまで ―


母は、なにに怒っているのか。

それは、ないがしろにされたことだろう。

具体例のひとつひとつは、ほんの一瞬の、ほんの些細なことかもしれない。けど、長い時間をかけて、繰り返し繰り返し、母はずっと、ないがしろにされてきた。姉もわたしも。ということになるけれど。

父は一度たりとも、家族を重んじたことがないと思う。

家族のことを考えたことはあっても、重んじたことはない。

それが、家族の問題をどんどん大きくしている。どこまで大きくなれば事の重大さに気づくのか‥‥と思っていたけど、家族を軽んじる父にとって、家族が「重んじるべき存在」に転じることはこの先もないかもしれない。

<次回に続く>


これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!

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心乃泉
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