【連載】家族会議『影を潜めたやんちゃ坊主』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議19回目#8|影を潜めたやんちゃ坊主
――これまで父は、いかにも正しそうな父親を演じてきた。そこに遊び心などはなく、だからわたしたちは、「きっと子供のころから苦しいことばかりだったんだろう」と思ってきた。
だけど、父にもやんちゃ坊主の子供時代があった。
そのやんちゃ坊主と話したい!
偽善的なことばかりいう「父親」ではなく、蓋されてきたやんちゃ坊主の人格で喋ってもらった方が、この家族会議ももっと有意義になると思う。
やんちゃ坊主はいつから出てこられなくなってしまったんだろうか?
父:
あれか‥‥結婚前にね、四国電力に1年間いたっつったじゃん。
わたし:
うん。
父:
あのときまではやんちゃだなぁ。多分。
母:
そうなんだ。
父:
だって、毎回飲みに行って、給料で足りなくてボーナス出張旅費、ほとんど使ってて。
経理に友達がいるんだけど、その人に電話すると出張旅費の精算書書いて金送ってくれるんだけど、「佐藤くんに金送ったんじゃ駄目だ、みんな飲んじゃうから。物で残しておこう」っていうことで、その人の親心でステレオを買ってくれたんですよ。俺の部屋にね。
出張から帰ったらステレオがドンとあってさ、「この部屋俺の部屋じゃない」と。表札見たら「俺の部屋だ」と。なんだこれはと。
わたし:
うん。笑
父:
結婚したときもあったかな?
母:
あった。そう言ってた。
父:
だから、それほど飲み歩いてたんだよ。
――そんなやんちゃ、想像できない姿だ。飲み過ぎて散財して、会社の人にまで迷惑かけてたなんて。
母:
飲めなかったのに飲み歩いてたんだね。
父:
うん。ビール一杯くらいは飲める。それを毎日。それでストレス解消してたんかな。
大阪に転勤してからは、結婚したからってそうは飲まなくなったのかな?だけど同僚と結構飲んでたな。でも無茶はしなくなった。
鹿島に転勤したら飲むことがなくなった。やられることばっかりで。
‥‥何かどうも鹿島で、完全に蓋されてるような気がするな。やんちゃが。
母:
結婚したとき確かに言ってた。なんかそれまでは、「飲んだりなんかしてお金使ってたけど、これからはそういうことをしないようにしないと」って。「しないようにするつもり」みたいなことは言ってたな。お金が間に合わなくなるからだと思うけど。
わたし:
飲みに行くのは楽しかったの?
父:
楽しむもなにもストレス解消だなもう。飲まずにはいられないっていうか。
わたし:
じゃあ、楽しく飲んでたわけじゃないんだ。「やってらんねえや」みたいな?
父:
「やってらんねえや」だけども。
病気になるんだね。飲まずにいられないっていうか、そこに出かけるのがいいんだわ。
母:
雰囲気がいいとか?癖になるみたいな
父:
そうそう癖になると。
母:
行かないとなんか物足りないみたいな。
父:
うん、落ち着かない。
わたし:
心のよりどころが必要だったってことなんだね。なんかあんまり、健全なやんちゃ坊主ってわけじゃないかもね、それも。やんちゃ坊主がやさぐれたみたいな感じかな。
父:
だからやんちゃっていうのは、完全になくなったのは、鹿島のS社(の担当になってから)じゃねえか。
母:
鹿島に来て飲む人もあんまりいなかったの?
父:
うん。俺の場合はお客さんと飲むから。
母:
四国とか大阪ではね。
鹿島では、あんまりそういうの聞いたことないね。
父:
飲むって感じじゃなかった全然。
母:
じゃあストレス解消するきっかけもなく‥‥みたいなことになるのかしら。
父:
だって、大阪にいたときはさ、飲み屋でボトルをキープするじゃん。俺の名前でキープするわけよ。すとお客さんがそれ知ってるから、この酒飲んで、空になったらお客さんがまた入れるわけだ。で次の日に「佐藤さんの飲んどいたから」と。「いいよいいよ」と。いうことで、そんな間柄で飲んでた。んで金沢のお客さんもそうだよ。「久しぶりに大阪に行ったんで佐藤さんの飲んだよ」と。「いいですよ」って。
母:
S社ではそういう関係が築けなかった
父:
まったく。
わたし:
それも大きかったのかもね。仕事ではいろいろあってもさ、プライベートで気の置けない付き合いができる時間でもあれば、多少は違ったかもしんないね。
――父は鹿島に転勤になり、S社の担当になってからずっと、身体に槍が刺さった状態だったと言っている。
父:
S社のお客さんと飲んだってないんじゃねえか?プライベートでは。ゼロ。
だからそういう意味で、やんちゃが完全に蓋されたっていうのは鹿島でしょう。
わたし:
そういう意味で‥‥。飲むイコールやんちゃみたいになっちゃってるけど。笑
でも鹿島あたりは本当そうなのかもね、いろんなポイントが鹿島にあるんだね。
父:
良いにつけ悪いにつけって言うんだけど、悪いにつけは悪いにつけじゃない?
わたし:
いいことってなかったの?
父:
何があったんだろうね。
わたし:
いいこと思い出してみたらどう?鹿島の。
父:
うん。そう思ってんだ俺も。
わたし:
良かったこと。
父:
人にだってさ、良いと悪いがあるんだから。悪いとこだけ言ったってしゃーねえ良いとこもあるだろうと、いうことで普通やるじゃない。
もう、今まで全部皆さんに言ってたの悪いとこばっかりで、いいこと本当にないのかもしらんけれども、何か探してみましょうね。そうじゃないとつらいよな、この先な。
母:
何か自慢できることでもいいし。
――「人にだってさ、良いと悪いがあるんだから」まではいいんだけど、「悪いとこだけ言ったってしゃーねえ良いとこもあるだろうと、いうことで普通やるじゃない」がひっかかる。
なんか無理やり感。投げやり感。
この強引な思考が、やんちゃに蓋をしたともいえるだろう。
― 今日はここまで ―
そもそも、鹿島にいた間というのは、わたしが生まれ、幼稚園に通い小学生になり、中学2年生までを過ごしている。
姉は、高校を卒業するまでの思春期が、まさに父に、まったくいいことがなかったかもしれない時期だ。
いいこと、なかったの?って思う。
子供達には、いっぱいいろんなことあったよって。
嫌な人のいいところを無理やり探すんじゃなくて、もっと視野を広げてみてほしい。
まあ、自分のことしか考えられない父にとっては、自分が辛かったことしか記憶にないだろうけど。
<次回に続く>
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