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【連載】家族会議『噛み合わない③』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
家族会議27回目#6|噛み合わない③
――この日のここまでの話し合いは以下の通り。
家族会議が終わりかけたタイミングで、黙っていた父が「コミュニケーションが欠けている」と発言し、場の空気が一変する。父の意見はこれまでの態度と矛盾しており、家族(特に娘であるわたし)は混乱し、苛立ちを募らせる。
わたしは「お父さんが一番気持ちを出さず、コミュニケーションを拒否している」と指摘しつつも、父の言葉の真意を理解しようと試みる。しかし、父の自己弁護や曖昧な態度が議論をさらに噛み合わないものにしてしまう。
一方で、父は「自分なりに勉強のために参加している」と説明するが、その言葉と行動が一致せず、家族間の不信感を深めていく。母もまた、父の態度に対して疑念を抱きながらも、家族全員が本当の意味での「気持ちのコミュニケーション」を取ることの重要性を訴える。
話し合いは、家族それぞれの立場や考え方の違いが浮き彫りになる中、進展の兆しを見せない。「気持ちに触れる」ことへの困難さと、家族会議の意義そのものが問われる回となった。
わたし:
とにかく、一旦、一旦時間を置こうか?っていう感じ。‥‥このままやってって、いいのかな?明日も明後日も?
母:
私の‥‥
わたし:
お母さんはやる内容あるけど。
母:
お父さん、この休んでる間は考えよう‥‥と、して‥‥るんですか?
父:
休んでる間ってどの間?
母:
ちょっと自分のことは置いといて、私のこととかやる間。
――父が「一旦自分のこと以外で家族会議をしてほしい」と言ったため、父の話には触れないことになっていた。
父:
あのね、俺おめえにも言ってると思うんだけども、まず俺の問題として、浮かばないんだなかなか。だけども、やりながら時間をおいて、とにかく思いついたことだけをやってみると。それで足りる足りない中身薄いどうのこうの別にして、それはある期間、泉には「今週いっぱい時間くれないか」って言ったんだけど、それは今週いっぱいで何とかしたいと思ってんのよ。
まず一つのテーマとしては小さい頃のやつ。それからもう一つのやつは、鹿島に来てからのやつ。やつっていうのは、自分の気持ちっていうところかな。それを整理しておきたかったの。少なくともこの二つぐらいだったら何とかなるだろうと。やってる間に、小さい頃のやつ浮かんでくれば、またそれも追加すればいいでしょうと。足りなかったら時間をまたもらってやればいいでしょうと。
んでこの場は、この場は俺、勉強の場だと思ってるわけよ俺の。だからなんていうの、何を勉強したのって最後聞かれるんだったらば、こういうことを勉強になったと言って、「それちょっと違う」とか、言ってもらったらまたそれはそれで勉強になるからいいんだけど。そういう立場で俺考えてんのよ。
母:
勉強は勉強かもしんないけど‥‥じゃ今日の話を聞いてて、お父さんの気持ちがどんな気持ちになったかとか、そういうことを
父:
俺の気持ちを?
母:
言うっていうか、気持ちのことを考える‥‥方がいいかもねって。
父:
だって相手の気持ちになるためには、どうやればいいかっていうのは盛んにやってたでしょうよ。
母:
だからそれを聞いて、お父さんはどう思ったのかなって。思ったっていうのはさっきのじゃなく、お父さんの気持ちはどんなことを思ったのかな?「もっとこうすればいい」とかじゃなくて
父:
いや。俺今日の話聞いてて俺、俺自身は気持ちのキャッチボールっていうのがね、ものすごく大切だなってのよくわかったわ。
わたし:
どの辺でそういうふうに感じたの?気持ちのキャッチボールが大事だなっていうのは
――この日の前半で話していたのは、母が姉の気持ちをわかるために、まず、「姉を傷つけた状況をあらゆる側面から考えてみよう」ということだった。
気持ちのキャッチボールの手前に、まず「事の重大さを正確に理解する」ことが大切だと。
浅い理解で会話をしようとすると、余計に姉を傷つけてしまう可能性があるから(というか現に今がそうだから)だ。
父:
何ていうの、進め方としてイエスノーイエスノーでやってくでしょ?
わたし:
ん?
父:
ん?なぜこれをやったんだこれをやらなかったんだとかさ。
母:
イエスノーっていうか自分のそのときの気持ちを考えるんだよ。なんでこれ出来なかったの?どんな気持ちでそれやったの?とか。
父:
はいはい。それを、自分のそのときの広範囲な状況を考えながらやるわけでしょ?だから結構莫大な話だと思ってんだけどこの状況っていうのは。だから、また言うけども(笑)1回途中で、その気持ちのキャッチボールを当事者と、今だったらお姉ちゃんかな?お姉ちゃんと、俺だったらやるぞと、いうふうに思ったわけ。それが感想です今日の。
――そうやって、浅慮な状態で姉に考えを伝えて、姉をさらに傷つけてきたことを忘れてしまったのだろうか‥‥。
わたし:
まあ、わかった。お父さんはそうすればいいんじゃないかな。
父:
今、言ったことで、なんていうの、やっぱこの、やるのにあたって邪魔だっちゅうならば、俺はあれをやるわ。あの、昼間やるやつをここでも。
――邪魔だとは言っていない。
わたし:
昼間やるやつ?
父:
さっき言ってた、幼少期の頃の親父との関係。それから鹿島に来てからの俺の気持ちというのは、ここで整理するから。
わたし:
家族会議をやってる間に?
父:
うん。
わたし:
それだったら家族会議やんなくていいよね?って思っちゃう。
父:
2人でやればいいってことか?
わたし:
そうなるよね。
父:
だったらいいじゃん。一緒に勉強のために俺ここに参加しているということで。勉強じゃなくて何?当事者として、大いに参加して発言してほしいわけ?
母:
当事者だよ。
父:
いやいやいや。当事者なんだけど、現におめえの、レターの話(母が姉に出した手紙の話)でやってんでしょうよ。どうやってお姉ちゃんと、なんだっけ?
母:
だってそれって、お父さんともすんごく深く関わってくる内容じゃん。
父:
いやそりゃそうだけどさ。今はあれでしょ?なんだっけ、美容院の話を例にとって、お姉ちゃんとのコミュニケーションというか、やり取りをしようとして
――美容院の話とは、母自身が美容室に行くために幼い姉を連れて行って、終わるまでおとなしく待たせていたというエピソード。このときのエピソードで、母は自分が精神的虐待をしていたと気づいた。
姉が鬱になった背景、姉が傷ついた気持ちをきちんと理解することを、母は実践しているところだ。
母:
いや、違うよ?お姉ちゃんとのコミュニケーションをとる前にやることだよ。
父:
うん?
母:
お姉ちゃんとのコミュニケーションを取る前にやること。今、私取れない状態になってるから。
――母は自責の念に駆られ、自分の言葉で姉をさらに傷つけたり縛ったりすることを恐れ、姉との会話がうまくできなくなっていた。
父:
ああ!あの、なんだっけ。その前にいっぱい自分のあれシチュエーション考えて?じゃあ、俺も大いに参加していいわけ?
いや俺は、口出ししちゃいけないと思ってたから。ずっと黙ってる。この間も黙ってた。今日も黙ってた。
母:
‥‥そんな(絶句)
父:
だって現にレターだって泉に見してさ
母:
お父さんにも見せたよね?
父:
うん?
母:
お父さんにも見せたやつだよ。
――手紙は事前に見せているし、この家族会議の冒頭で全文を読み上げている。
父:
あっそう。なんだか知らないけど。俺別に、そこは聞かなくてもいいんだろうなと思って。参加するんだったら、やっぱ俺も見なきゃいかんでしょうよ。こないだ見たやつだったらそれでいいんだけど。
――家族会議に参加している以上、全員に聞いて欲しい話をしているし、全員が聞くものだと思っている。わたしと母は。
父は勝手に自分の中で、聞く聞かない、関係あるないを判断して会話に入ってこない。
そんな父が、「わが家には気持ちのコミュニケーションが欠けている」と言うのだから、あきれて言葉もでない。
母:
うーん‥‥なんか、まあ‥‥うーん‥‥
わたし:
うー‥‥ん。ちょっと言葉が出てこないけど。
父:
なんか2人から拒否反応を起こされてるような気がするんだけど。
わたし:
お母さんはわかんないけどわたしはだいぶそうだね。
父:
そっかあ。もう泉はやりたくない方向に行ってる?
わたし:
うー‥‥ん‥‥。まあ、わたしはだいぶ拒否してるけど、先に拒否してきたのはお父さんだからねっていうのは、言っとくね。
で、やりたくない。気持ちは相当ある。
父:
泉が?
わたし:
あるよ?こないだからね。あるけど、でも家族会議ここでやめちゃいけない‥‥いけないっていうか、お父さんの「家族会議だけは、やめたらまずい気がする」みたいな気持ちはわかったし、わたしもそれはそうだろうなって思うし、だからやってる。だからやってはいるし、今、もうやめようっては思ってない。だいぶ嫌ではあるけど思ってなくて。ただなんか、今の状態で、続けていけないなっていう感じかな。気持ちよくは。
父:
ふぅ。そうですか。お母さんも同じ?
母:
私?私はとにかくお父さんにもっと、自分の立場も知ってほしい。これ(家族会議)をやる自分の立場。もう本当に、初心じゃないけど‥‥。
なんか、例えば今日みたいな、ただの見物みたいな。お父さんがお姉ちゃんのことを考えるときにだって、私もお姉ちゃんにすごくひどいことしてきたけど、お父さんだってひどいことをしてきてるわけだから、そのことを考えるにはどう考えたらいいのか。お姉ちゃんはもうお父さんにもお母さんにも腹を立ててるわけでしょ?そこんところをわかるには、もうお父さん、見物してる場合じゃないよ。
父:
見物じゃなくて、べ
母:
勉強とも違うと思うよ。もっと、自分のこと。自分のこととしてやんないと。
父:
わかりました。じゃ大いに発言しますよ。
なんか、お前の話が始まったときから俺入っちゃいけないのかなと思って。2回やったでしょ?2回とも俺黙ってたじゃん。
――なぜ母の話が始まったかと言えば、父が「違う話で進めて欲しい」と言ったからである。
わたし:
もう‥‥なんか‥‥
基本的に本当「すっごい黙ってんなあ」と思ってたけど。でもお父さん、とにかく自分にスポットが向けられるのが嫌なんだろうなと思ったから、もう、お父さんのことは気にせずお母さんの話でと思ったけど‥‥本当に何も喋らないなって思ってはいたけど。
でも、基本的にお父さんってそういうスタンスだよね。これ始まってからの話じゃなくて、前からそうだよね。
――落ち込むような、納得いかないような表情の父に、困惑してしまう。
‥‥お父さんばっかり責めるようになっちゃう。こういう話になると。‥‥だから嫌なんだよ‥‥
だから一旦さ、本当、ちょっと時間おいた方がいいんじゃないかって‥‥。
― 今日はここまで ―
父は会話に参加しなかったのではなくて、口を出しちゃいけないと思ったから、あえて参加しないようにしていた。という理論。だから、責められていることに納得がいかない。という理論。
筋を通しているつもりである。
父はそうやって、自分が加害者であるにも関わらず、裁判官の席に座って高みの見物をしている。
加害者と被害者と弁護士の言い分を吟味してジャッジしてやろうとしていただけなのに、言いがかりをつけられたとでも思っているのだろう。
まあ、裁判中に居眠りする裁判官はいないだろうから、父を裁判官に例えるのは裁判官に対して失礼な話ではある。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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