
耳で聴く「Le Petit Prince -あのときの王子くん-」 フランス語版、英語版、そして日本語版
こんにちは。
ナレーターの佐々木健です。
昔、アニメ「学園戦記ムリョウ」で文化祭で歌うシーンがあり、収録スタジオにギターを持って行き、「中学生なので、上手くなくていいからね」と音響監督にクギをさされ、それなりに歌った佐々木です。曲名「前を向いて歩こう」。懐かしい。
さて
星の王子さまの翻訳で知られるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「Le Petit Prince(ル・プチ・パンス)」。
その新訳「あのときの王子くん」のオーディオブックが、2021年12月8日に発売されました(iBooksとAudibleは12月17日発売)。
地語りとぼく(パイロット)の台詞を担当しています。心を込めた作品です。どうやったら多くの人に、大人にも子どもにも聞いてもらえるかなぁと、考えながらこの記事を書いています。
「フランス語版、英語版、そして日本語版」
今回は「フランス語版、英語版、そして日本語版」と言うタイトルをつけて、日本語の朗読について考えてみたい。
「朗読」ってちょっと聞くのが大変なイメージがありませんか?
今回、語りを担当させていただくにあたって、読みの参考にしたのは、フランス語版と英語版の「Le Petit Prince(The Little Prince)」のオーディオブックです。
フランス語版や英語版を聴いて、日本語の朗読はどうあるべきかを探りたいと思ったんです。
フランス語版は、ベルナール・ジロドー(Bernard Giraudeau)が朗読するオーディブルを聴きました。この方はフランスの俳優さんで、映画監督でもあるそうです。1人語りです。せつない音楽とともに進んでいきます。
なんとなく、映画「ニューシネマパラダイス」のおじいさんと少年の関係とか景色が頭に浮かんできます。映画はイタリア語だったと思うけど。すこしケンカ腰な感じだけど、みんな気は優しい。下町な雰囲気。
対訳本とのセットもあります。こちらもおすすめ。サン=テグジュペリの肉声が収録されています。語尾の優しい喋り方の人で、結構外交的かもと言う印象。
さて、英語版は
名優ケネス・ブラナー(Kenneth Branagh)が朗読しているマルチメディアCDを見つけました。
でも、廃盤なのかどうやっても購入方法がないんです。
YouTubeにアップされていたものを何度も聞きました。
王子くんを子供が演じていて、すごく生意気で可愛い。オーディオブック「あのときの王子くん」では、小学生の秋山晴くんが、見事に王子くんを演じてくれています。僕のイメージ通り!
ケネス・ブラナーは、シェイクスピア俳優で、映画「オリエント急行殺人事件」での大きな髭を蓄えたポアロがかっこよかったですね。「ダンケルク」もかっこよかった。これぞイギリス人って感じの尊敬する俳優さんです。読みも素晴らしい。キャラの使い分けも聞き惚れます。
全体、快活なイメージです。バリバリの大人。飛行士は悩んでいると言う感じはあまりしない。
フランス語版、英語版を聞いてまず思ったのは、読むスピードが速い。
王子くんの全編を1時間50分くらいで読み終えています。もちろん省略してるところもあるでしょうが。
海外の朗読って、バーっと語っていくイメージ。
僕が最初に読んだとき(2006年)は2時間51分かかっています。他の方の朗読もだいたい3時間前後。YouTubeで読んでいる人たちもそれくらいのようです。
つまり日本語に訳されることで、言葉が増えて、さらに、せつない話として、ゆっくり読んでいるんだろうと想像できます。
翻訳の大久保ゆうさんは、フランス語のテキストの量と同じくらいになるように訳されたそうなので、僕はフランス語や英語と同じくらいのスピードにできないかと思いました。でもやってみると難しい。
今回、読みの担当として目指したのが完成尺2時間10分。
「と〇〇は言った」と言う言葉はカットしましたが、内容はノーカット。
何度もやってみてここに落ちつきました。
再生時にスピードを変更できるアプリで1.2倍にすると、全体1時間50分くらいになるので、それが英語版、フランス語版と同じくらいのスピード感かと。
さて、朗読にはいくつかのスタイルがあります。
ゆっくり丁寧 vs 語りかけスタイル
話者本人で読む vs キャラを演じて読む
フランス語版のベルナール・ジロドーも、英語版のケネス・ブラナーも、語りかけるスタイルで、話者本人のまま読むスタイルだと思います。
日本語の朗読をいくつか聴いてみると、ゆっくり丁寧に、話者本人のまま読むスタイルが多い印象です。日高のり子さんや、佐久間レイさんの朗読もありますよ。
僕が目指したいのは、語りかけるスタイルで、キャラを演じて読むスタイル
パイロットは41歳と推測しています。
サン=テグジュペリが砂漠に不時着したのは実際にあった話で35歳。そこを6年前のこととして語るのならば41歳になります。
1900年生まれのサン=テグジュペリは、1941年が41歳、戦争中にアメリカに亡命した時期に当たります。
しかし、Le Petit Princeのパイロットは、想像上の人物です。
6歳で絵描きの夢を諦め、パイロットになった男。
ずっとひとりぼっちで生きてきて、ある日、僕のエンジンの中で何かが壊れて砂漠に落ちた。つまり僕の解釈では、傷つき内にこもった男。
傷ついた男が王子くんと出会い、現実世界に戻り、やっと王子くんのことをみんなに話したいと思った。そういう男として語りたい。
今回、キャラは演じていますが、声は作らないで語っています。
ほぼほぼ、そのままの自分とキャラがかぶっていますしね。
朗読スタイルについては、PodcastかYouTubeで、実際にその違いをやってみようと思います。
皆さんは、どんな朗読スタイルが好きでしょうか?
日本語の朗読はどれが正解なのか、皆さんも考えてみてください。
最後に、僕がリスペクトしている日本語版を紹介します。
音楽物語CD「星の王子さま」
森本レオ(パイロット)、中島朋子(王子くん)、岸田今日子(バラ)、主題歌を薬師丸ひろ子(作詞大貫妙子、作曲矢野顕子)、音楽を服部隆之と言う豪華なメンバーの作品。ストリーミングでは残念ながら見つからなくて、中古CDしか買えないみたいです。
森本レオさんがね、ずるいんですよ。あの声、あの語りでパイロットなので、わけもなく引き込まれる。中島朋子さんは同年代で、北の国からを見てた僕からは蛍ちゃんなんですが、王子くんがすごく優しい。そしてバラの岸田今日子さんが、もう最高。僕の中では初期ムーミンの声の人なんですけど、すこし震えながら喋るあのちょっと狂気を感じる芝居がすごく良い。惚れました。
このテイストと才能の集まり、好きです。日本のプロが集まって作った王子くんの音楽物語、良いです。ダウンロードで再販しないかなぁ。
「あのときの王子くん」予告編はこちら
予告編は、僕自身として演じずにナレーションしてますね。パイロットではない。すっごい微妙な違いですけど。
購入方法について
お好きな方法で購入ください。プレビューで5分くらい聞けます。
本編は2時間10分あります。
パンローリング「でじじ」
出版社であるパンローリングのオーディオブック配信サイト「でじじ」
CD版とダウンロード版があります。
iTunes & iBooks Store
Audible (Amazon)
CD版、Audible版があります。Audibleは月額会員制となっており、会員登録をすると1つコインが付与されますので、無料で読めます。1ヶ月以内にやめることも可能です。