社交不安を和らげるために 〜対人恐怖症からの回復〜
看護師 髙橋佑
社交不安があると、人に対して過度に緊張や不安を感じるため、人との交流を避ける傾向にあります。
必然的に孤独になりがちです。
人のいない時間に活動するため、昼夜逆転になることも多いです。
本日は、社交不安障害から、少しずつ回復しつつある事例を挙げてその関わり方を考えていきます。(本人の許可をとって、個人が特定されないように大きく脚色しています。)
彼との出会いは1年前でした。その頃は対人恐怖が強く、感情の表現や自発的な発言が難しく、昼夜逆転の生活を送っていました。
人と会うと手足が振るえるほどの緊張で、訪問看護中終始うつむいていました。
現在18歳。親との関係がよくないことから、一人暮らしをしています。
高校に進学したものの途中で発症し、退学し、ほぼ引きこもり状態。人々が寝静まった夜に少し出るくらいでした。
社交不安障害から日常生活に相当な制限がかかっています。
しかし、彼には強みがあります。
それは、家事が得意なことです。室内は整理整頓され、食事も自炊しています。金銭管理も問題ありません。
訪問看護では、その強みを活かして、対面すると緊張が強くなるため、一緒に料理などを行いました。
対面するより、何かをしながら関係性を築き、人に慣れるという練習をしました。
強みがゲームならゲームをしながら、強みが絵を描くことなら絵を描きながら。
対話中心ですと、対面するため緊張が増します。
訪問看護で、まずは一対一の関係に慣れ、訪問看護を朝の時間に設定して生活リズムを整えます。次にコンビニの店員に話しかけるなどして、人に慣れるようにスモールステップで支援していきます。
そして、少し慣れたら駅などの人の多い場所に行き、人が多い場所でも大丈夫だと自分に落とし込むように声掛けを行います。
慣れは自信に直結します。慣れは最強です。
本人と話しながら慎重に、振り返りながら失敗しないように社会に曝露していきました。
この結果、引きこもりから今では電車でデイケアに行けるようになりました。
自信を持って前進している様子が見られます。自分自身が自分の可能性を信じ、前向きに進んでいることを自覚しています。
大切なことは、社交不安が強い人には、対面するよりも協同作業で人に慣れること。
スモールステップで少しずつ慣れること。
成功したことを一緒に振り返ること。
明日は一緒に山菜をとりに行ってきます。