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ヤンキー社長、強迫症になる②

看護師 山田祥和

 前回の続きです。利用者さんが同じ強迫症の人の役に立てればという思いで協力してしてくれています。

 ヤンキーでイケイケだった自分が強迫症になるまではこちら


 気合いと根性の自分が、精神科に通院するなど思ってもいませんでした。

 誰でも精神疾患になるのか!

 最初に病院の先生から病気だと言われ、実は内心ほっとした部分もありました。というのも病気なら治るかもしれないと思ったのです。

 しかし、強迫症はそうあまくありません。病気とわかっていてもあの考えがまた浮かんでくるのです。考えをやめようと思っても勝手に湧き上がってくるのです。

 誰かを傷つけてしまうかもしれないという観念があり、その思いを和らげるために確認します。

 この確認行為が家族や周りを巻き込むことになります。

 自分が寝ている間に動き出して、人を殴りに行くかもしれないから寝ないで見張っていてくれ。自分が吐いた息で感染してしまうかもしれないから窓は絶対に開けないでくれ。自分も大変でしたが、周りも大変でした。

 診断を受けてからも、引きこもっていましたが、月に一回の診察は行かないといけません。

 家族が運転してしていましたが、「自分のくしゃみで家族が驚き、人を轢いてしまうかもしれない」外に出ることは怖くて怖くて生き地獄です。気が狂いそうです。なんとかしてくれー!助けてくれー!と叫びながら受診していました。

 私と会った人が無事か病院に電話しまくりました。

 そんな私ですが、回復の第一歩となったのが、認知行動療法です。

 外に出られない私に、医師は精神科の訪問看護を勧めました。人に会うなんて世界の終わりを感じましたが、私の場合、薬物療法があまり効果的ではなかったのです。

 訪問看護は医師の指示で家にいながら治療ができます。認知行動療法の「暴露反応妨害法(ERP)」が私の治療の中心となりました。

 最初はとても怖かったのですが、看護師さんと一緒に不安を引き起こす状況に直面し、それに対して強迫行為をしないように練習します。

 不安階層表というのを使い、乗り越えられそうな不安から行いました。誰もいない時に外に出るところから始め、人を遠くでみる、10メートルくらいのところで通り過ぎる、次に挨拶する

 私の場合、人と対面して目を合わせて話をするのが、もっとも怖かったです。

 看護師さんとの会話中に感じる恐怖(突然自分が殴ってしまうかもしれない)をあえて避けず、じっとその場に留まるという練習を繰り返し行いました。

 面白いことに、若い頃は平気で喧嘩していたのに、自分が殴ってしまうかもしれないという恐怖心が浮かぶのです。

 最初は辛くてたまりませんでしたが、次第に不安が和らぎ、強迫行為をしなくても大丈夫だと感じるようになりました。

 次第に、自分でも新しい対処スキルを学び、それを日常生活に取り入れていくことができました。

 強迫観念が生じたときに深呼吸をする、楽しい趣味、私の場合は車のことを考えるという方法です。この頃から少しずつ仕事に復帰するようになりました。

 家族や友人、従業員にも自分の状況を説明し、サポートをお願いしました。人に頼ることを情けないことと思っていましたが、この家族や友人、従業員の理解と支えが大きな助けとなりました。

 以前は家族や従業員に怒ってばかりいましたが、今ではありがとうと感謝しています。みんなのお陰で仕事に復帰することができました。本当に感謝です。

 あれから10年、加害恐怖は完全に消えるわけではありませんが、症状をコントロールすることができるようになり、仕事も順調です。ちなみに今でも定期的に受診しています。

 私の体験を通じて伝えたいことは
強迫症は回復の可能性があること
 適切な治療とサポートを受けることで、日常生活を取り戻すことができます。
誰でもなりうる病気であること
 ヤンチャで喧嘩ばかりしていた自分勝手な自分もなりました。自分を責めないことです。
一人で抱え込まず相談すること
 周りに理解を求めることが大切です。

 一番言いたいことは、病気を通して人に感謝することを身につけましたことですかね。

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