どうしようもなくなってから努力をする人達、日本の民主主義が世界トップレベルで劣化している証拠
ドイツと日本は大戦の敗戦国だ。敗北後、西ドイツはソ連への防波堤、日本は中国とソ連への防波堤としてアメリカに利用された。当事国もこれを利用し、経済復興した。その間、両国とも本土は戦争に巻き込まれていない。
人間は愚鈍なもので自分たちの平和が続けば民主主義は劣化する。民主主義が劣化しないように保つ方法は「自己批判」以外にない。
さて、ドイツにはかつて哲学者のグループがいた。フランクフルト学派と呼ばれる人たちだ。1960年代、ドイツでもベトナム反戦運動があり、フランクフルト学派の哲学者たちは最初は共感したものの、反戦を唱えるドイツの左翼を批判した。フランクフルト学派の識者の目にはドイツの民主主義がすでに劣化しているように見えていた。特に、音楽学者のアドルノは反戦を叫ぶ人たちへ「どうしようもなくなってから絶望的な努力をしている。思慮深い人間のすることではない(※一部意訳)」と痛烈に批判した。
どうしようもなくなってから努力する人たち・・・どこかで見たことがないだろうか?そう、今日の私たち日本人だ。安倍批判など形だけ。その私たちが支持してきた安倍政権はいったいどれだけ続いたと思っているのか。マスコミが迎合し、国民が迎合し、詐欺と卑劣にまみれた日本の政治は、オリンピック招致にしろ役人の汚職にしろ、日本のモラルを失墜させた。今更安倍が辞任することで日本の民主主義の何が本質的に改善されているのか、答えられる人間は一人もいない。私には日本国民が自己批判をしないですませるために安倍を批判しているようにすら見える。
日本の政治のクレイジーさは、国政選挙の投票率と与党の議席数という二つの数字で証明することができる。冒頭にふれたように、ドイツと日本は共にアメリカに「戦後教育」された国だ。そして、ドイツの連邦議会と日本の国会の総議席数はどちらもおよそ700議席。他国に比べ限りなく公正な比較ができる。まず、投票率はドイツがおよそ70パーセント、日本はおよそ50パーセント。そして、ドイツの与党(CDU)の議席数はそのうちおよそ200議席(200/700議席)、日本の与党(自民党)の議席数はそのうちおよそ400議席(400/700議席)。
これだけで歴然たる違いが分かる。ドイツは学んだのだ。1930年代にナチスに「何の疑いも持たなかった」自分たちも、1960年代にベトナム反戦運動で犠牲者がふえて「どうしようもなくなってから叫んでいた」自分たちも、どちらも「民主主義が生み出した最低最悪の自分たち」だったことを。無関心と油断が最大の敵であり、政治への関心を恒常的に持たなければと。
ドイツとの投票率差20パーセント。有権者1億人の20パーセントの約2000万人の愚鈍な人たち。その人たちに何も伝えられない5000万人の投票者たち。祖父の世代も反省せず、親の世代も反省せず、私たちも反省せず、約一世紀遅れで、今日も私たちは「どうしようもなくなってから」勤勉に努力する。