トラウマの癒し:身体に封印されていたもの (6)
トラウマの癒し:身体に封印されていたもの⑤の続きです。
解かれ始めた封印、そこから出て来るものに抵抗せず、ただひたすらに感じていくワタシです。まるで井戸を掘り当てたように、深いところから湧き出る涙を流しながら。
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●信じたのに●
朝目覚めると、胸に感じていた重苦しさが全身をすっぽり覆っていた。オーラを見える人がその時のワタシを見たら、淀んだ鉛色のオーラが見えたかもしれない。ワタシはこういう時、無理に気持ちを切り替えようとはしない。何か理由があってそういう気持ちになっているのだろうから、ちゃんと感じることにしている。頭が痛いとか、吐き気がするとか、脚が痛いとか、身体が不調を訴えた時と一緒だ。
その重苦しさは重石となって、深いところにワタシを引っ張っていく。
その深い深いところから涙が湧き出てくる。
カレとの間の摩擦が引き金になったのは確かだけれど、それが理由でないことは考えるまでもなく明らかだった。その時のワタシの中には、カレとのことが入り込む場所などどこにもなかった。
ワタシはソファに横になり、その重苦しいエネルギーに身を任せることにした。そうせずにはいられなかった。それ以外は何もする気になれなかった。そのエネルギーを感じて涙を流し続けることしかできなかった。その涙がどこから出てきているのかも分からないまま。時々、ワークショップで書いた助けを求めて手を伸ばしていた自分のことが頭に浮かんだ。涙はさらに溢れ出した。
カレが起きてきた。「ボンジョルノ(おはよう)」にソファに横たわって背を向けたまま「ボンジョルノ」と応えた。いつものカレに戻っていた。むしろいつもより上機嫌なくらいだ。何も聞かずに、放っておいてくれたのが何より助かった。どうしたのか聞かれたところで、答えなどワタシにも分からないのだから。
その日は月曜日。お掃除のキラちゃん(仮名)がやって来る日だ。脱いだパジャマをしまいにベッドルームに行って、それからベッドを整えようとした。泣きたくなるようなことを考えたわけでもないのに、涙が勝手にポタポタとこぼれ落ちる。カレが「キラにやってもらえばいい」と言った。いつもはそう言われても続けるところだけど、その時はパタリと手を止めて部屋を出た。その瞬間
「信じたのに」
という言葉がワタシの中から突然出てきた。この言葉に心が強く反応して、涙が堰を切ったように溢れ出した。自分の部屋のように使っているゲストルームのバスルームに駆け込んだ。
信じたのに。
最初に出て来たのはカレに対することだった。そしてそれはすぐにあの時につながった。(前にもカレとの関係の中で感じたことが、あの出来事で感じたことと同じだったと分かって唖然としたことがある。そして、自分の中に閉じこめられていたエネルギーが、出口を求めてカレとの現実を創り出していたことを知って驚愕した。深いところにあるものが、分かりやすい形で現実となって現れるという、今回もそのパターンなのだろう。カレはワタシを癒しに導く役割を持っているのかもしれない。そんなことを時々思う。)
あの時もそうだった。
あの時ワタシは信じたんだ。
信じたのに!!!
その背後で
どちらの時も100%信じてはいなかった。
不安や疑いを感じながら信じようとしたんだ。
と別のワタシが言った。それでも「信じたのに」という声は消えなかった。込み上げて来るもので声が出るほど泣けて仕方なかった。大粒の涙が止めどなくこぼれた。そんな風に泣いていることに自分が驚くほどに。ほどなくして別のことが出て来た。
「助けて欲しかったんだよ〜。お母さ〜ん!
お母さんに助けて欲しかったんだよ〜・・。」
声にならない声で言った。あの頃のワタシだ。
母にこのことを話したくなった。
「あの時ワタシは信じちゃったんだよ。本当はどこかで変だなって思ってたのに、信じちゃったの。一緒に遊んでくれてたから。」
「それからね。ワタシはずっとお母さんに助けてもらいたかったんだよ。心の中でずっと助けを求め続けてた。」
そんな言葉が溢れ出て来たから。
つづく・・