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本当の「スタートライン」に立てた日。

「理想の学校をつくりたい」と本気で思い始めて、5年の月日が経った。思い起こせば、ちょうど今から5年前の一月末に「北九州きのくに子どもの村学園」に見学に行き、「体験を通して知識を学ぶ」カリキュラムに感動していた。それから2年後に小学校教諭を退職し、仲間と出会い、約3年間かけて学校をつくってきた。
 
 初めて青空教室で学校を開校した日、場所が決まってプレ開校した日、カリキュラムも決めて本開校した日。何度も「スタートライン」には立ってきたと思う。

 でも、何気ない「今日」という日が私にとって特別な日になった。

 それは、これから長いスパンで挑戦していきたい「基礎学習のあり方」が見えてきた日だからだと思う。学校が始まって初めの1年間は、「基礎学習」の時間すらなかった。一日中ゲーム三昧の子どもたちを前にして途方に暮れた。本開校と同時に「基礎学習」の時間ができてからも、学びに向かいたくない子と対話を重ねたり、一日45分という限られた時間の中でどうやったら「読み書き計算」が学べるのか悩んだりする日々だった。ただでさえ短い時間で、かつ小学一年生から中学三年生までの基礎学習全般となると気が遠くなる思いだった。

 でも、なんとか一人一人の気持ちや状況に合わせて、毎日少しずつ取り組んできたことが実を結び、最近は落ち着いて学びに向かうことができるようになってきた。そうなれたのも毎日交代交代に来てくれる三人の「学習ボランティア」さんの存在が大きい。学習ボランティアさんは、元小学校の先生で退職されたベテランの先生だ。小学生の中でも一番基礎の基礎となる一年生の学習を担当してくださっている。

 その三人の先生と、大学三年生で週に一度学習ボランティアにきてくれ、高学年向けに算数や理科の授業をしてくれているあやちゃんと五人で「四月からの基礎学習をどうするか」について今日話し合うことができた。

体験から知識を学んでいく授業がしたいんです。一緒に考えてもらえませんか?」

心の底から出た声だった。言う時にドキドキした。ずっとずっとそんな授業をしたかった。でも、どこかで「無理なんじゃないか」と思っていた。それは、小中学校の莫大な量の学習指導要領に圧倒されていたからでもあり、どんな風に実践すればいいのか全く情報が足りておらず、イメージが湧かないということでもあった。

だけど、総合的な学習だけで学びを進めている長野県の伊那小学校やきのくに子どもの村の実践、そして何より日々学習ボランティアのあやちゃんがしてくれる体験型の授業への子どもたちの学ぶ意欲をみて、「できるかもしれない」と思えてきたのだ。

それを初めて自分の口から出したら、そこにいるみんなが色んなアイディアを出してくれた。

「いもづくりで足し算、引き算、かけ算、重さの単位、畑の面積、調理実習を挟んだら、測ったり、割り算したり。色んなのが組み込めるね!」

「学校で働いていた時、羊羹をつくって体積の学習をしたよ」

「地域の人を巻き込んでやっていけば、生活科や社会科もできると思う」

「算数と理科を楽しく学べる体験的な学習は任せてください!」

力強い言葉がたくさん出てきて、泣きそうになった。みんなでやったら、もしかしたら、できるかもしれない。本当にやりたかったことができるかもしれない。「子どもたちが自ら生き生きと学ぶ学校」がつくれるかもしれない。

一人では、難しいと思っていたけれど、気づけばまわりには、素晴らしい仲間と力強いサポートをしてくれる方々がいた。本当のスタートはこれからなのかもしれない。道のりは、きっと険しいと思う。生半可な気持ちではできないことだと思う。だけど、なぜかとってもわくわくする。

何年かかってでも、納得できるカタチを見つけていこう。それが私のここのねでの役割だと思う。



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