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プロローグ

この記事は、2019年4月刊行予定の「HSCと不登校」についての書籍  
(タイトルはただいま検討中)のプロローグです。
【目次】はこちらをごらんください。

プロローグ

学校がつらい……

行きたくない……

それは、誰にでもある自然な気持ち。

でも、それが続くと何がつらいの? 学校に行かなくても大丈夫なの? 親子は不安な日々を過ごし、不必要に傷ついたりしてしまいます。

「パパ、ママ、どうして学校に行かなければいけないの?」

もし、お子さんが「幼稚園に行きたくない……」「学校に行きたくない……」と言ったらどうしますか?
そうでなくとも「どうして学校に行かなければいけないの?」

という言葉が子どもの口から発せられるとき、そこに「行きたくない」という気持ちの存在を感じつつも、大人なりの色んな考えや思いを子どもに話して聞かせるのではないでしょうか。

私はそうでした。

「学校は、将来社会に出るための準備の場所だよ」

「学校で勉強しないと家ではできないでしょう」

「嫌なこともあるかもしれないけど、集団の中で揉まれ、人間関係や規律を学ぶことが大事」

学校に行く意味は、すごくすごく簡単に言うとこういうことかと思うのです。

笑顔と生気がなくなった息子を前にしても、そういった世間で言われている一般的な学校に行く意味が頭から離れず、息子のつらさよりもそちらを優先させてしまいそうでした、その時は。

学校に通えなくなる理由は色々あると思うのです。

いじめられたとか、先生が怖いとか、集団行動が苦手とか、規則が苦手とか。

それは一時的なことだからと、多くの人は、行かせるべきだと考えるのではないでしょうか。

しかし、中には、一時的ではなく、常に学校がつらく、行きたくないと感じる子がいます。

そんな子は、ひょっとしたらHSC(Highly Sensitive Child)なのかもしれません。

HSCとは?

HSC(Highly Sensitive Child) =生まれつき繊細さや感受性の強さ・豊かさ、感性の鋭さを持つ、 “とても敏感な子”のことです。

HSCは、鋭い感性や感受性の豊かさのほかにも、想像性に富み、人の気持ちに寄り添ったり、その場の空気を読み取ったりするなど、思いやりや共感力・直感力に優れていて、細かい気配りができるなどのとても優れた面を持っています。

大人の場合は、HSP(Highly Sensitive Person)といいます。

アメリカのエイレン・N・アーロン博士によって提唱された概念です。

ほぼ5人に1人は、HSC・HSPに該当すると言われています。

HSCは、生まれ持った気質です。だから、性格とちがって変わることはありません。

その気質が環境に合わないと、抵抗や拒否反応が起こるのは自然なことなのですが……。

・やる気がないと受け取られる 。

・甘えと受け取られる。

・わがままと受け取られる。

このような誤解を受けてしまうケースも多々あり、残念ながら、そのような誤解が、敏感な子の生きづらさになったり、自己を否定することにつながってしまったりしています。

HSCは、“病気”や“障がい”ではなく、“気質”であるため広まりにくく、知らないという人の方が多いのです。

そこで、できる限り誤解をなくし、生まれ持った気質が理解・尊重されることで、自分はそのままで価値があると感じられる自己肯定感を得られるよう、本人にも周りの人にも、正しい知識を持ってもらう必要があるのです。

レッテル貼り? ラベリング? カテゴライズ?

一方で、「HSC」などという名前に対し、新たなレッテル貼りだという意見や、枠にはめて決めつけることはしたくないという意見もあり、何となく周りの人に言い出しにくい、拡散されにくい、という『HSC拡散に立ちはだかる壁』のようなものを感じることがあります。

しかし、名前は、枠にはめて決めつけるために提唱されているものではありません。

抱えている悩みに名前がつくことで、敏感な子の反応を否定する必要がないことや、受け止め方がわかることもあります。

子どもさんや親御さんご自身、あるいは、大切な人の、生まれ持ったありのままを知ることができ、適切な関わり方ができるようになるための大切な用語なのです。

共通する、繊細さ・感受性の高さ・思慮深さといった特徴

私は10年ほど前から精神科医の夫の診療に立ち会ってきて、人の心や過去に深く接し、3年ほど前よりカウンセラーとしての仕事を本格的に始めました。

その中で、社会不安障害、適応障害など、苦しみを抱えてつらい思いをしている方から、学校や合わない環境に無理に頑張って適応し続けて、ストレスフルで心に傷を負う体験を繰り返してこられたという話を伺うことがありました。

その方々の中の多くに、「繊細さ、感受性の高さ、思慮深さ」といった特徴が共通していることを捉えていました。

その後、知人からHSCについて耳にしたことをきっかけに、その特徴こそがHSCだと知ったのです。 

無理な登校による心の傷が与える将来への影響を防ぎたい

学校などの集団や組織では、HSCの気質から起こる強い感情の反応は受け入れられにくく、適応を強いられると精神的にとても疲弊してしまいます。

また、敏感で繊細な感覚や反応を否定されると、深く傷つき、自尊心や自己肯定感が削がれてしまいます。

孤独感や不信感、そして、恐怖や敏感さの高まりは、育っていく過程の体験がとても影響しているのです。

本人と周りの理解が重要だからこそ、私はHSCをもっと広く、多くの人に知ってもらい、HSCがもつ素晴らしい力を発揮できる場を増やしたいと思っています。

ですから、無理な登校が促されることで、将来にまで影響をおよぼすような心の傷を防ぐことができるよう、学校生活のつらさの一因に、という気質があるということを知ってもらいたくて、この本を作ることにしました。

葛藤と不安……苦しむお母さん

学校に行きたくなければ行かなくていい。

そのような考え方をする人や、そのような発言はとても増えましたし、私もそう思っています。

実際に、すべての子の育つ場が「学校」である必要はない、選択肢はいくつもあるということが普通だったら、ここまで傷を負うことなどなかった、傷を負わせることなどなかったのに、という声がたくさんあるのです。

でも、現実には、子どもが学校に行けなくなると、克服させる、適応させるのが“普通”や“当たり前”という常識が頭をもたげ、多くの場合、お母さんばかりに葛藤と不安がどっとのしかかります。

そして、

「私の子育てが悪かったのではないか……」といった自責感

「先生や学校に迷惑をかけてしまっているのでは……」といった罪悪感

「なんとか適応できるように頑張らせなくては……」といった責任感

「このまま行かなくなったらずっと行けなくなって将来が心配……」といった不安感

これらがまとわりついて心が揺さぶられるのです。

学校の何がつらいの?  もし学校に行かなかったらどうなってしまうの?

学校に行きたくなければ行かなくていいと、腑に落ちるまで、親子は不必要に傷ついたり不安な日々を過ごしてしまいます。

子どもにも、お母さんにも、「学校に行かなくても、今も将来も大丈夫」と思える安心材料が必要なのです。

防ぎたい!

学校に気質が合わなければ、その子にとって学校は地獄だと言います。

ずっと我慢して学校に行き、苦しみに耐え、時に糸が切れると、自分が悪いのだ、至らないのだ、と自責する。 そうやって大人になった方が抱える「心の傷」がどんなものかも他の人には理解されなくて、傷がえぐられることもある。

その悪循環を止めたい!!  カウンセリングの度に思ってきたことのひとつです。

仕事や生活に支障を来すほどの生きづらさや苦しみを抱えている場合の回復は簡単ではありません。

負わなくてよかったはずの傷や自己否定感、そういった方々その方の歴史に、日常的に触れているからこそ「防ぎたい!」そう強く思うのです。

不登校になりがちな気質の子とその親がもっと幸せに感じる社会になるように

本来HSCは、個性的で素晴らしい魅力や才能に溢れていて、その子に合った環境や関係を選択できていれば、その子らしさが発揮されて、自己肯定感や自己価値が削がれることなどありません。

否定されることなんか、ひとつもありません。

HSCに必要な環境や接し方があることや、子どもによっては学校以外の選択肢が必要であることを、声を大にして言いたいと思います。

「これが普通の社会になるように」

そういう子にとっては、学校に通うだけが唯一の方法ではないことを、みなさんにお知らせしたいのです。

学校の他には、例えば、フリースクール、適応指導教室、デモクラティックスクール、インターナショナルスクール、ホームスクール、親の会、特色ある教育、学習塾、アンスクーリングなどがあります。

その子に合った学ぶための環境を用意しようと思う時に、こういった学校以外のオルタナティブ(既存のものに取ってかわる新しいもの)な場所で、心身ともに健康でいられるものを選んだ方が幸せな子がいるのです。

ただ、現状では不登校の子たちが学校以外の場所で安心して学べる制度が十分には確立されていません。

学校の先生などからの、学校に戻すことを目的とした働きかけが負担となって悩んでいるという声が後を絶たないのも実際です。

だから、その先のセーフティーネットとして、本当は学校以外にも選択肢があることを伝えたい。

HSCは、多様性の一つで、その個性を失わせてはいけないのです。

クラウドファンディングに挑戦した理由

私の目的は、学校教育批判ではありません。

学校には学校の価値や良さがあると思いますし、素晴らしい先生も大勢いらっしゃいます。

しかし、『学校という環境がどうしても合わない子』もいる。

「学校がつらい」と感じることは、その子たちにとって、とても自然なこと。

学校に適応させることが当たり前で、誰も気質と学校の相性について知らなかったから無理してしまったけれど、ちゃんと気づけたのだから正しい知識を身につけて、これからいくらでも取り戻せる! 伸ばせる! ということを伝えたい。

選択の判断・安心材料となる本を制作して敏感な子を守りたい!

そして、このような思いをプロジェクトにして支援を募ることで、仲間やサポーターになってくれた方々とタッグを組んで拡散できたら何よりありがたい!

そう思い、クラウドファンディングに挑戦しました。

クラウドファンディングには、本当にたくさんの方々がご支援くださり、お力をくださいました。

そして、たくさんの願いの込められた応援のメッセージが届けられました。

おかげで無事に目標金額を達成し、プロジェクトを実行できることになり、そのメッセージもこの本に載せることができることをとても嬉しく思います。

こうして「HSC」が認知され、サポーターが増えることで、 敏感な子が、安全・安心と感じられる学校(社会)にしたい!

どうしても学校教育や、学校という場、その雰囲気自体が合わないHSCの親子にとって、 学校に行かなくても幸せと感じられる安心材料をつくりたい!

この本は、その安心材料のひとつとなるように……同じ想い、願いを胸に、集まってくれた書籍制作プロジェクトのメンバーと力を合わせてつくっていきます。

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kokokaku(斎藤 暁子)
サポートありがとうございます。 そのお気持ちは私に元気と勇気を与えてくれます。 私もそれをたくさん還元していけたらいいな。