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【テレビ感想】100分de名著「安克昌“心の傷を癒すということ”」
100分de名著「安克昌“心の傷を癒すということ”」を全4回視聴しました。
いやー、すごく良かった✨️
今年は阪神・淡路大震災から30年ということで、
以前、2020年に放送されたドラマの感想を書きましたが、
ドラマの方は、安さん目線 かつ 時系列で、主観的に描かれているのに対して、
100分de名著の方は、ご著書である「心の傷を癒やすということ」という本の内容にフォーカスを当てて、安さんの考察なども含め、全体を俯瞰して味わっていく感じでした。
印象に残った点
1、現代の日本における精神医療の幕開けを作った人
「PTSD」「心のケア」などの言葉、今では当たり前に使っていますが、それらの言葉が、一般的に広く使われるようになったのは、阪神・淡路大震災(安さんが使われ始めて)以降だということ。
→それまでは、"苦しくても頑張る"のが当たり前の世の中。それが出来ない人は、心の弱い人(個人の問題)。また、精神科や精神疾患に対する世間の偏見・誤解・差別がまだ色濃くあった時代だった。
→阪神・淡路大震災をきっかけに、「心も体と同じように傷を追うんだ」「それが長く残り続けることもあるんだ」「それは誰にでも起こり得ることなんだ」という理解につながった。
→そういう意味では、1995年に起こった阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件、そして安さんの著書は、「現代の日本における精神医療の幕開け」だと言えるのではないかと感じた。
2、誰一人として"ひとりぼっち"にさせない社会を目指した。
安さんが誰にでも接する態度は、ルーツを辿れば、ご自身の出生(在日コリアン)に繋がるということ。
→ドラマで描かれた最期のシーンで「心のケアって、誰一人として、ひとりぼっちにさせないことや。」と悟る場面があります。今回100de名著で学んだのは、誰にでも「心の弱さ」は存在していて、社会的弱者というのは、社会の側が生み出している問題だ、と安さんが考察していたこと。
→また「横のつながり」の大切さについても触れています。最初は、体育館の中で、常に周囲の目を気にしながら過ごさないといけない反面、横のつながりは持てていた。そこから、バラバラの仮設住宅に住むと、自分のプライバシー・ひとり時間は確保される反面、横のつながりがなくなり、孤独を感じたり、ネガティブ思考を膨らませやすい。
→「自助グループ」というものの大切さ。似たような境遇を体験した人たちが、ただただ語るだけの会。それを語るということは、現実を受け入れていく、自分の中で折り合いをつけていく作業なのだという。そして、それは、そんな体験をしていない"外の人"とは、分かり合えることなど到底できないと感じてしまうこと。
→そこに精神医療の限界を感じていて、いくらテクニックが優れている精神科がいても、それよりなにより同じ境遇にいる隣人に気持ちを受け止めてもらう方がいいこともあるということ。誰もが半径5mの人たちに優しくし合える社会こそが、目指すべき社会ではないかと。本当にそうだなと感じました。
3、トラウマの種類や経過やほぐし方について
フラッシュバックのように忘れられない記憶があって、遠ざけたいあまり、現実に対して、無意識な回避行動をとったり、無気力になってしまったりするケースもあれば、
亡くなった我が子のことを忘れたくない、過去の思い出に浸っていたい、と引き寄せられていく(いわば逆の)ケースもある。
どちらも現実と折り合いをつけられていない点では一緒なんだなと。
そして、周囲に気を張って、感情(思いっきり泣く、叫ぶなど)に蓋をしてしまうのではなく、それを表現してもいい状況を作ってあげること。
また、無理にその問題と向き合わせようと、外から力を加えるのではなく、その人のタイミングで、自らの意志で「向き合おう」と思えるようになるまで、待つということ。
たとえば、一緒に散歩するなど、なにか同じ作業をしながら、喋ってもいい、喋らなくてもいい状況を作り、共に時間を過ごしながら、近くで見守り続けるということ。
誰かが「癒やす」なんていうのはおこがましくて、精神科ができるのは、自らの意志で「向き合おう」と思えるようになるまで、一緒に待ってあげることだけなんだ、ということ。
感想
本当にそうだよなぁ~。深いなぁ~。としみじみ感じました。
カウンセリングや傾聴の本質を知れたような気がします。
コーチングでは、相手をエンパワメントすることも含みますが、深い心の問題については、「相手を信じて待つ」ということが、とても有効な手段だと感じました。
日々勉強ですね。
ではまた!
しゅんたろう