エッセイ【その本は、まだ生まれていません。】
その本は、まだ生まれていません。
私の頭の中にだけ、その本はあります。
中学の時、初めて書いた小説もどきは、まだ書きあがっていなかったのに、国語の教師に持っていかれたまま……返却されなかった。卒業式の時に返して欲しいと言えなかった自分に、いまだに腹を立てている。
いわゆる中二病感満載の今思い出しても赤面するような小説もどきを、私はなんだってあの教師に渡してしまったのか。もしもあの時、とぼけたふりをして渡さず手元に残していたら……と、そこまで考えて気がついた。きっとその書きか