長谷川派 源氏物語図屛風(國華1550号〈特輯 源氏物語図屛風〉要旨)
片山寛明
滋賀県 MIHO MUSEUM
紙本金地着色 六曲一双
右隻:縦158.0㎝ 横361.0㎝
左隻:縦158.0㎝ 横362.0㎝
この源氏物語屛風は、両隻端の金雲上に朱文で枠の無い鐘形の「長谷川」と読める印と方形の枠内の円形内に判読できない2文字を表わす印を伴うことから、長谷川派の絵師によって描かれた可能性がある。長谷川派といえば雪舟五代を自称した等伯を始祖とし、水墨をはじめとする漢画を得意とした画派であり、このようなやまと絵で多く描かれた画題を描いているのは珍しく思われる。しかし等伯が柳橋水車図屛風を描き、久蔵が大原御幸図屛風を描いていることもあり、江戸時代には絵屋として立っていた長谷川派にこのような作品が残されていても不思議ではない。そこでここでは個々の場面に見られる他の源氏絵にはない描写を指摘し、人物表現、樹木などの自然表現にも漢画系の作者にふさわしい特色なども紹介して、これが江戸時代初期(17世紀ころ)の長谷川派の画家の手によるものである可能性を探ってみたい。