環境への適応に必要なこと

「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。
それは、変化に最もよく適応したものである。」
かの有名なダーウィンが残した名言である。

昨今では、「適応力」なる能力も仕事において注目され、
採用や評価の基準になることもある。

では、「適応する」とは一体どういうことなのだろうか。
「適応する」力とは、どうやって身に付ければよいのだろうか。

適応とは「循環する力」である

適応を人体の活動という観点で考えてみたい。

いうまでもなく、人間の体は、高い適応力があるから、
今日まで生き残っている。他の動物より繁栄している。

人体はとても複雑な機能を有しており、
維持するのは、とても大変だ。しかし、人間は、それを可能にしている。

人体に限らず、何らかの機能を維持しようと考える時、方法は二つある。
①遮断:外界と中を完全に遮断し、影響を受けなくする
②循環:外界からの影響を取り入れ、上手く使い、不要なものを外界に出す

人間は、①と②、両方の機能を有している。
特筆すべきは、②の方である。

何かを維持しようとしたときに、①のように、
外界からの影響を遮断すればいい、と誰しもが考えがちである。

かわいい一人娘に、変な男が寄り付かないように、
男子禁制にしてしまうようなアクションだ。

しかし、①遮断は決定的な弱点がある。
なぜなら、外界からの影響は、常にダイナミック且つ予測不可能だからだ。

当たり前のようになっているが、
人の体は、日本で言っても気温0度~30度という差に対応している。
朝~夜の間でも、気温は変わる。気温だけでなく湿度も変わる。
風だって、弱い日と強い日がある。
太陽の光も、明るい時間と暗い時間がある。

こんな変化の激しい状況で、
完全に外界の刺激を遮断することは不可能だ。
①遮断だけでは、機能を維持し、生き残ることはできないのだ。

必然②循環と言う形が必要となる。
というよりも、②循環という形をとっているから、
人間は様々な環境に適応でき、地球上のあらゆる場所に住むことができた。

②循環で、一番最たる人体の活動といえば、「食事」と「排泄」だろう。
どんどん変わる環境に適応するために、様々な栄養素を補給し、
体に取り入れ、また、不要なものは外に出すことだ。

免疫もそうだ。完全にウイルスを遮断などできない。
体に入ってしまったら、そこから免疫を生成する。
必要に応じて、白血球とウイルスを戦わせ、鼻水などで、外に出す。

もちろん完全ではない。循環できず、人体では耐えきれない毒もある。
ただ、あらゆる動物の中で、最も優れているのは間違いないだろう。

適応する力とは、
外界からの影響を取り入れ、上手く使い、不要なものを外界に出す、という
循環する力なのだ。

適応する力は、入力・変換・出力が必要

では、個人や組織が社会や経済生活の中で適応し
「生き残る」という観点では、何を意識すればいいのだろうか。

上記の循環を参考にすれば、
・入力 ※人体で言えば「食事」
・変換 ※入力を変換して活用すること。人体で言えば「運動」
・出力 ※人体で言えば「排泄」
が大事だと分かる。

入力とは、個人で言えば、外から受ける影響だったり、
新しいことを学んだりすることだ。

ただ、勘違いしている人が多いが、
これだけでは全く適応していることにはならない。
「刺激を受けました」とか言ってる人は、何も変わっちゃいない。

入力だけというのは、人体の活動で言えば、食事だけしている状態。
摂取したエネルギーを使って、特に運動もせず、
排泄が無い状態。体に悪いことこの上ない。

重要なのは、入力を目的に向かって「変換」して
「何を成せたか?」「何が変わったか?」である。

また、「成せた」「変われた」のであれば、
今までやってきたことの中で、もう不要となることが、当然出てくる。
なので、「もうしないこと」「忘れること」という「出力」も大事である。

組織でも同じだ。新しいことをやたらと掲げて、
制度やルールが増え続けている組織、
ただ単に大きくなっている組織は弱い。
むしろ、
「新しく始めたことが何に繋がっているのか?」はもちろん、
「新しく始めた結果として、何を止めたのか?」
が大事である。

会社であれば「止めたこと」の結果として、
人の移動(解雇)や、事業の売上の縮小や撤退という形があって当たり前。
それがないのに、「変化に適応してます!」と言っても、嘘である。

個人でも組織でも、適応力があるかを判断するためには、
「何をやめましたか?」と聞くのが一番効果的だ。

もちろん、既にしていることを止めるのは痛みが伴う。
反発もある。新しいことをやるだけの方が、キラキラしているし、
楽しい。でも、そこに強さは現れない。

高度経済成長期に道路などのインフラをどんどん作る政治家は、
楽しかっただろう。

もちろん大変なこともあっただろうが、今は、もっと大変だ。
人口減少に伴い、インフラ維持費削減のため、
むしろ「どのインフラや公共事業を止めるか?」が、大事になってくる。
そこに住んでいる人、公共事業の仕事をしている人など、
必ず損をしてしまう人と、膨大な交渉をしていかなければならない。

IT革命、グローバリズムといった変化の激しい時代。
「変化を取り入れ活かすこと」「今までしてきたことをやめること」という
高い適応力が、個人にも組織にも求められている。

まとめ

『新しく始めただけで、満足しない。「何のため?」はもちろん、
「代わりに何を止めたのか?」にこそ、強さが出る』

肝に銘じよう。

かしこ。

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