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孤独ではなく、

孤高。

「孤高の人」
新潮文庫
新田次郎さん著


山岳小説の金字塔。
読む前に私も既に、
タイトルだけは
存じ上げていました。
 
昭和初期の社会人登山家、
“単独行の加藤文太郎”。
ヒマヤラ征服の夢を心に秘めて。
限られた裕福な人だけのものだった
登山界に、ひとりで挑んでいった
孤高のひとの物語です。

孤高。
孤独、の高みにある
イメージを抱かせる言葉。
孤独という言葉はどこか、
他人の視線、自分への内省。
侘びしさや寂しさを感じさせて
いたたまれない気持ちに
なるものですが。

孤高という言葉は、
その言葉自体が独立していて。
遥か高みにあって、
見上げているような。
そんな印象があります。

孤独の侘びしさ、寂しさ。
虚しさも暗さも重さも
当然のこととして
全部その身に引き受けて。
それでもなお、前だけを向いて
ひたすらに進んでいく。

その軌跡が
とてもうつくしく、
光り輝いているように
見えるのです。

加藤文太郎さんは、
まさにそういう人で。
読んでいてとても
うつくしい人だな、と
思います。

山の描写がとてもリアルです。
人間を寄せ付けない自然の厳しさ、
そしてそれ故の美しさも
さることながら、
それに挑む文太郎さんの
ひたむきな姿。
心が洗われるようです。

山だけだなく、
山を通じて知り合う人びと、
職場の人びと。
文太郎さんを取り巻く
様々な人びととの交流の場面も
色々と考えさせられます。

すっくと背筋の伸びた、
骨太で堅牢なものがたり。
そんな清浄な、
山の朝の空気のような
印象の本です。

山が好きなあなたにも、
そうでないあなたにも。
どんな方にもおすすめできる、
素晴らしい本だと思います。
よろしければぜひ。 

✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨

ここまで読んでくださいまして、
どうもありがとうございます!


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