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時代遅れのプリントゴッコと古びた漫画家、そしてメリークリスマス
プリントゴッコの実演エッセイ漫画
こちらは15年以上前の派遣漫画です
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全てはネタになると始めた派遣バイト
デビューから10年近く経って漫画家として壁にぶち当たった私は派遣バイトを始めました。
とにかく「世間」と触れたかったのです。
当時はどんな仕事も楽しく、いつかネタにしようと詳細に日記に記してました。
しかしこのカップルさんとご婦人がいらした日は本当に大忙しで。カップルさんがいらした時も「早く切り上げたいな…」という気持ちが正直ありました。
でもその後にジュースを持ってきたくださったのは本当にびっくりして。
「ああ、この仕事の面白さってこういう所なんだな」と感動しました。
そして
『誰かのために何かを為す』のが仕事なんだ、と。
漫画家は特別な仕事と思ってた自分を恥じた休憩室
当時漫画を辞めるつもりはなかったけど、干された作家生活の中で
「次は一体どんな漫画が描けるだろう?」
と思いながら休憩室でぼんやりしてました。
そんな時社員さんが携帯をいじったり、旅行パンフや福利のチラシを見てるのを見て
「ああ、みんなこうやって”ちょっと今の人生つまらないな、でもまあ次の休みに旅行いこうかな、今日はアレ買って帰るか”って自分を励ましながら、人生をなんとかやりくりしてるんだ」
と気づいて。
「私は今までこういう人たちに漫画を読んでもらってたんだ…
こういう読者に楽しんでもらおうと考えたことあったか?
派遣もどこかネタ探しみたいな軽い気持ちがあったのではないか?」
そう自分を恥じました。
そして漫画家こそ『誰かのための仕事なのだ』と。
どんな仕事も他者に喜んでもらうための仕事
あれから15年以上経って去年この事をエッセイに描いたら多くの人に喜んでもらえて。
ねとらぼさんと朝日新聞デジタルさんに取材していただきました。
今だから美談のように語れる話ですが、この時期は本当にどん底で泥水を啜っていました。ずっと封印していた時期です。
でもこの経験があったからこそ今も漫画を描きたい、誰かに喜んでもらいたい、と思えてるのだと思います。
そのことを忘れないためにこの漫画を描きました。
今も漫画を描けてることに感謝して。
メリークリスマス。