【面白数学】12 -朝の階段ベクトル
コロナ前。
満員電車で通勤が当たり前だったころの小田急新百合ヶ丘駅、朝。
いつも頭の隅で気になっていたことがあった。
乗り換えのためには、階段を上り下りしてホームを変えなければいけない。そのときに、階段のところで渋滞して進まなくなるのだ。気持ちの急いている感じと反比例するかのような“進まなさ”にイライラしてしまっていた。
いつにも増して進まないある日の朝、いい機会なので、これなんで渋滞するのか考えてみた。
するとこんなモデルが浮かんできた。
気持ちがせいている階段下の自分の進行ベクトルを仮にこうだとしよう。
単位時間に進む距離と考えていい。
そして、時間が進むと、自分も階段をあがっていく。
するとどうだろう。
階段に対しては先ほどと同じベクトルが、ホームのプラットフォーム上の線に対しては短くなってしまう。
つまり、cosθだ!
あぁ、これが進まなくなる原因か。
階段下にいるときのプラットフォーム上のベクトルと、階段をあがっているときのプラットフォーム上のベクトルは、大きさが違うのだ。
なーるほど!
もちろん階段で渋滞する理由はこれだけではないだろう。たとえば、ベクトルだけで考えても、入口と出口のところでも様々な方向ベクトルが混線することで直方向のベクトルが短くなる。
それ以外にもあるかもしれない。でも少なくとも、階段をあがるときにプラットフォーム上に射たれたベクトルは短くなること、そしてそれも一因であることはたしかなように思えた。
なんて思っているうちに、階段の直下まできた。いつもイライラしながらあがっていた階段が、心なしか足取りが軽くなったような気がした。
しかし周囲を見回すとみな無表情で階段をあがっている。
そこには無言の多数のベクトルが階段に並行しているいつもの風景があった。
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