尾崎豊と喉越しに学ぶ生きる幸せ
子どもの頃、なぜ大人はビールを飲むのか疑問に思っていた。"それって美味しいの?"とよく周りの大人に聞いても、決まって"苦いよ。でも、疲れた後に飲む喉越しがよくてやめられないんだよねぇ🍺"という返答が多かった。
時はながれ僕もビールを初めて飲む機会があったが、案の定苦さが勝り、大人達の言う"喉越し"の意味はその時分からなかった(笑)
"喉越しって何なんだろうなぁ"
と、ふと考えていたそんな時、尾崎豊さんがあるライブMCでお酒にまつわるこんな漢文を言っていたのに出会う。
「身後黄金北斗ヲ支フトモ不如生前一杯ノ酒」
戦争に行く前の兵士が「死んだ後に北斗七星を支えるように黄金を積まれるよりも、生きている間に一杯の酒を飲ませておくれ」という意味の漢文だそうだ。
この時、その兵士がどんな事を思ってこの詩を詠んだのか想像せざるを得なかった。
きっと、生きている内に"自分は生きているんだ"という感触をもっと感じたかっただろう、一杯の酒が口に入り喉を通る感触を覚えておきたかっただろう、感じていたかっただろう。
その時僕は思った。
ビールが喉を通り、「こりゃ苦いな」と感じる事でさえ自分が生きている証で、生きているからこそ苦いという気持ちを味わえたんだと。
死んだ後に黄金を積まれても使えもしなければあの世に持っていくことも出来ない。
生きている間に飲む一杯の酒には敵うわけがないよな。
(きっと兵士は生ビールでないとは思うが)
これは"生きて感じられることの幸せ"を伝えたかった漢文なんだと気付いた。
あぁ、そうか。
ビールは苦いけど、喉越しが良いからやめられないと語ってくれたその言葉の意味がわかった気がした。
"今日も生きてるぞ!"って大人達は確かめてたんだな。
喉越しにはこんな深い意味が隠されていたのか…と1人で勝手に納得した僕であった。
大人の言う"ビールの喉越し"が何だか愛おしくなった気がする。