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コンサル→スタートアップ、その"一歩目"の最適解

こんにちは、長洲 (@koki_nagasu) です。
2014年に社会人となり、これまでに 投資銀行 → Boston Consulting Group → リクルート (スタディサプリ) → SaaSスタートアップ というキャリアを歩んできました。 
(投資銀行は1年半で退職しBCGに第二新卒で参画したので、キャリアとしてカウントするのもおこがましいなと思っております…)

ポストコンサルの選択肢としてスタートアップが有力視されて久しいですが、投資銀行やBCG時代の友人の話を聞いたり自身でもBCG→リクルート→スタートアップを経験していく中で感じたことをもとに、コンサルタントがスタートアップに飛び込むにあたっての考え方や最適解について私見を述べさせていただければと思います。

最も大切なのは"一歩目"という考え方

今も昔もですが、コンサルティングファームに新卒やそれに準ずるジュニアレイヤーで入社する方の中で入社時点で「私は一流コンサルタントとして名を馳せてJapan OfficeやAPACの中核になるんや!」という心づもりでいる人はかなりの少数派で、多くはその後のキャリアパスを考えたときの「外さない一歩目」としてコンサルティングファームを選ぶというパターンが多いように思います。私自身も例に漏れず、BCGで3年働いたタイミングでオンライン学習サービス『スタディサプリ』のサービスオーナーになるべくリクルートに転職しました。

【余談】
私は種々の施策や価格戦略の抜本的見直し等により2年間かけて徐々に『スタディサプリ』のユーザー数増加や利益率改善を実現していったのですが、そんな努力などはじめから必要なかったのではと思うほどに「コロナ禍の休校によるオンライン学習ニーズの高まり」という追い風が強すぎました。それは3年先の事業計画を達成するレベルで、マクロ環境は全てに勝るのだということを強く実感するとともに、図らずも自身がスタディサプリで実現したかった世界が勝手にやってきたこともあり卒業を決意したのでした。

『スタディサプリ』大躍進の裏側

にもかかわらず、ポストコンサルの文脈になると急に多くの方が唯一絶対の青い鳥探しを始める傾向にあります。

  • イケてるサービスを提供するスタートアップに

  • アーリーフェーズから高い職位で参画し

  • 自分のこれまでの経験を活かしてバリューを出し

  • やりがいと報酬と人間関係と私生活とを調和させながら

  • いずれはIPOでアップサイドを狙う…

正直、一足飛びに狙うのは相当難しいと言わざるを得ません。
スタートアップ求人は水物であり魅力的な会社×魅力的なポジションにタイミングよく出会うには縁や運に恵まれる必要があることも理由のひとつですが、そもそも新卒どころかインターンシップからスタートアップを選択するキャリアが珍しくない今、ぽっと出の元コンサルタントがいきなりスタートアップ純粋培養のメンバーを押しのけ大活躍するには強みや経験がまったく足りないということは想像に難くありません (足りないというよりは最適化されていないという方が正しいかもしれませんが)。

もちろん例外もいますが、一般的なコンサルタントにとっての話です

としたときに、ポストコンサルキャリアにおいても、中期目線を持ちながら一歩目にどこでどういった価値を出しつつ何を得るのかという考え方が非常に大切になります。 

いざスタートアップへ、その"一歩目"の選択肢

ファンドやVC、大企業やメガベンチャーといったその他の選択肢ではなくスタートアップをポストコンサルファーストキャリアに選ばれた方は、特に一歩目の踏み出し方が重要です。同じポジション名であっても機能分化の進んでいないスタートアップにおいては個々人の職掌が広くなりがちですが、それをうまく機会と捉えて価値を出せるところとチャレンジするところが両方バランス良く存在するポジションを選ぶことで、二歩目三歩目の歩幅を大きくすることができます。価値を出せるポイントで信頼残高を貯めつつ、その残高を使いながら新しいチャレンジを同時に経験していく、といった具合です。

以下、コンサル→スタートアップへキャリアチェンジする際に想定される選択肢について触れたいと思います。

1. 経営企画/事業企画職

ー どこで価値を出せるか? ー
事業計画策定やKPI・メトリクス管理、マーケット動向や競合分析では価値が出しやすく、コンサルタント時代に培ったスキルセットがそのまま当該ポジションの本丸スキルと合致しているため堅実な一歩目と言えます。上記をリードしているが故に投資家コミュニケーションに帯同するケースも多いので、経営の中枢にいるという見方もできるかもしれません。

ー 何をチャレンジできるか? ー
得意なことで勝てるフィールドに身を移しているようなものなので、多くの場合チャレンジの余地は少ないです。実際に事業をドライブしているわけではなく、それに必要な経験が積み上がるとも言い難いです。

ー どういったキャリアステップを目指せるか? ー
「CFO候補」という名目で経営企画職の求人が出ていることも多いですが、スタートアップCFOに求められる役割の最たるものは資金調達やIPO準備ですので、それに資するスキルや経験がない場合には実際にCFOとなってかつ成果を出すことは難しいかもしれません。私の観測範囲では、経営企画職でスタートアップキャリアを始めた元コンサルタントは、多くがそのまま経営企画畑を歩んでいます。VP of Corporate みたいな役職も増えつつあります。

2. BizDev職

ー 何をチャレンジできるか? ー
事業をドライブすること、非連続な事業価値の創出にコミットできることが何よりのチャレンジです。スタートアップにおけるBizDevはまさに事業"開発"で、結果が100からマイナスまであり得るエキサイティングなものです。その分圧倒的な当事者意識や巻き込み力、多岐にわたる打ち手を片っ端から試していくエネルギー量などが求められます。表現は色々ありますが、事業成長のためにやれることはいかなる手段を用いてでも何でもするという気概が必要なのは間違いありません。
詳しくはFASTGROWさんの記事や偉大なBCG Alumniであるラクスル福島さんのnoteを参照ください。


ー どこで価値を出せるか? ー
上記をご覧いただければ分かる通り、実はコンサルタントとBizDevは似て非なるものです。ご自身の経験がどうこうというより、シンプルに上記をご覧になった上で「やってやるぜ!」と思えるかどうかが全てだと思います。

ちなみに、近年BizDev求人も増えてきておりますが、ミスマッチが起こりやすいものでもあるので十分に注意してください。
観測範囲での例を挙げると、

1. アーリーステージのスタートアップにBizDev職で参画したものの、創業者自身が引き続き事業オーナーを担っているため創業者の意思決定や指示に従って動くだけになっている

2. シリーズB~Cの企業における事業責任者という肩書ではあるが、管掌事業は当該企業のvisionを体現するコアサービスではなく (手堅く稼ぐために) 生み出されたサブサービスで、特にコアサービスとの繋がりもなくやりがいに乏しい

3. メガベンチャーで「自由に新規事業を作れる」と聞いて参画したが、実際はシナジー創出等の観点から事業領域等の縛りが強く、なかなか自身のやりたい事業との折り合いがつかずモヤモヤしている

といったミスマッチが発生しています。多くが入社前の面談できちんと見極めることで防げると思いますので、転職活動の際はご留意ください。

BizDev転職の悲哀


ー どういったキャリアステップを目指せるか? ー
BizDevはスタートアップCxOやプロ経営者への登竜門といえます。事業を0→1 / 1→10で、かつ上流から下流まで主導することはビジネスサイドの経営者に必要とされる経験のひとつですし、自ら事業を一周回した方の言葉は説得力を帯び、人を動かす際に大いに役立つでしょう。

3. カスタマーサクセス職

ー どこで価値を出せるか? ー
カスタマーサクセスは文字通り顧客の成功に向き合うため、クライアントワークで培ったスキルやマインドが大いに役立ちます。BtoB SaaSの場合、カスタマーサクセスはまず以下のような動きをしていきます。

  • オンボーディング時には、サービス導入の目的をヒアリングするとともに、顧客とのディスカッションを通して目指す姿の解像度を高めた上で、最適なサービス活用方法と進め方を設計

  • オンボーディング後には、当該サービスの利用を促進するだけでなく、徹底的に顧客に伴走しながら課題解決や事業成果へ貢献すべく戦略・戦術設計や実行を支援していく

上記はツール利用促進のためのカスタマーサポートとはまったく違うもので、サービスの提供する価値や当該SaaS企業のスタンス (事業戦略) によって "サクセス" なのか "サポート" なのかが異なります。最近はどの求人も「カスタマーサクセス」というポジション名になっていますが、実態がどうであるかは正しく把握するようにしてください。

CS = カスタマーサクセス? カスタマーサポート?

上記の活動を通して顧客への価値提供を行っていきますが、その成否が解約率という目に見える形で跳ね返ってくるのはsellingを行わない若手コンサルタントでは得られない経験です。売上に直接影響を与えるという点で、カスタマーサクセスもセールスと同様に、ファームから事業会社への転職を企図するコンサルタントの多くが思う「ビジネス (=事業運営) しているという手触り感」を得る第一歩と言えるでしょう。


ー 何をチャレンジできるか? ー
ひとつは営業です。
カスタマーサクセスは利用率向上や解約抑止を担うのはもちろんですが、究極的にはNRR (Net Revenue Retention) の向上をミッションとしています。つまり、既存顧客が昨年より今年、今年よりも来年により多くの金額を支払ってくれる状態を実現するために活動しています。そのためにはただ顧客をサポートするだけでなく、日々のコミュニケーションや定期ミーティングを通して顧客の状態や課題を正しく把握した上で積極的にアップセル・クロスセルの提案を行っていくことが求められます。
「新たにカネを出させる」というビジネスの根幹ともいえる営業活動にそれまでの支援で積み上げた信頼をレバレッジしつつチャレンジできるというのは、コンフォートゾーンでもパニックゾーンでもなく良い塩梅のラーニングゾーン (ストレッチゾーン) と言えるのではないでしょうか。ラーニングゾーンについては、ベンチャーキャピタルANOBAKAさんの記事をご覧ください。

加えて、プロダクトマネージャーに近い動きが求められる点もチャレンジと言えるでしょう。
機能に精通しており、かつ実際にプロダクト (サービス) を利用している顧客からのフィードバックを受け取る最前線にいるカスタマーサクセスは、顧客の改善要望や新たなニーズを正しく把握しプロダクトチームに伝えていくことで開発の方向性に示唆を与えるという非常に重要な役割を担っています。特にスタートアップにおいては「プロダクトが顧客に刺さらない = 死」であり、プロダクトこそ経営といっても過言ではありません。


ー どういったキャリアステップを目指せるか? ー
プレーヤーとしては上述のチャレンジを経てセールスやプロダクトマネージャーといったポジションに移っていく方が一定数おり、比較的二歩目三歩目の選択肢が広いです。
また、プロダクト・顧客・売上創出という事業成長に必要な要素に向き合っているポジションであるため、BizDev職と同様に経営レイヤーへの登竜門といえます。実際、当社 (コミューン) の初代カスタマーサクセス部長はCRO (Chief Revenue Officer) に就任しその管掌範囲を営業部まで広げました。

"一歩目"の最適解

コンサルタントというひとつの完成された世界から飛び出すからには、これまで培ってきた強みを活かすことも新たなチャレンジをしてさらなる経験値を積み重ねることも両方諦めないでほしいと思います。そのために、私はスタートアップ最初の一歩目としてはカスタマーサクセス職を強くお勧めしたいです。 (前述の通り「やってやるぜ!」という気概のある方はBizDev職もありです。ただしコンサル経験はそこまで活きないので相応の苦労をお覚悟ください)
カスタマーサクセス職をご検討される際は、担ぐプロダクトが顧客のどういった課題を解決するものか、顧客の事業成長にどのようなインパクトを与えるものかを吟味していただければと思います。顧客にとっての重要度が低かったり提案の余地がないようなものである場合、単なるオンボーディング担当やサポート担当になってしまうためです。

私の所属するコミューン (https://commmune.jp/) は顧客コミュニティというソリューションを通じて "企業とユーザーが融け合う社会を実現する" というVisionを達成すべく邁進しているSaaSスタートアップで、コアプロダクト『commmune』はコミュニティ構築プラットフォームとして多種多様な企業様からさまざまな目的でご利用いただいています。
当社のカスタマーサクセス (カスタマーコンサルタント) は上述のおすすめポイントを全て満たしており、その募集要項にある必須要件が「クライアントワークでの個別の提案作成/コンサルティング経験」のみであることからも、コンサルタントとカスタマーサクセスの親和性が見て取れるかと思います。

コミューンのカスタマーサクセス募集要項 (2022年9月時点)

最後に

BCG時代も充実していましたが、卒業後も非常にエキサイティングで充実した日々を送っています!もし自分の肩書きが「一流コンサルタント」になることに違和感を感じる方は、ぜひ躊躇せずにポストコンサルキャリアの第一歩を踏み出していただければと思います (昇進タイミングさえ気にしなければファームにはいつでも戻れますし) 。 
みなさまの一歩目がより良いものとなることを祈念しております。


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