誕生日にはいつも。
この日を迎える度、どんな顔をしていいやらわからないという気持ちになる。
無邪気に喜ぶような年齢ではないし、祝いの会のようなものが行われることもないので基本的に普通の日と変わらない。出生に歓喜できるような性格ではないし、そんな輝かしい人生でもない。
それなのに。この日が普通に過ぎ去っていくのが、何となく、味気ないなとも思う。例えば綺麗な月が出ているとか、気持ちのいい風が吹いているとか。そんな些細なものでいいから、何か特別な感慨をもたらすものを欲してしまう自分がいる。
ただ普通に過ぎて欲しいような、特別であって欲しいような、相反する思いが曖昧に脳を巻く。
誰にも告げないまま終わりゆくこの日。ケーキも何も用意しないで、ただ忙殺されるだけに終わろうとしているこの日。その最後の最後で、天邪鬼が私に耳打ちする。
生まれて以来の付き合いである彼の企みに乗っかって少しだけ特別なことをしようと、飾らないことを意識して書いたこの文章。特別をやった、という実感を自分にプレゼントしよう。それが「いつも」を超えるきっかけになることを祈りながら。
本、映画、音楽など、数々の先達への授業料とし、芸の肥やしといたします。