お店に来る万引きする人

万引き。それは普通に犯罪ですが、おそらく当時のパソコンショップでは横行していたと思います。
店内はいつもお客さんでごった返していて、死角が出来やすく、店員も忙しくして視野を広げて見ていられない状況です。
もちろんさまざまな対策は検討されてきました。当時としては比較的早く防犯機を導入しました。入口に防犯ゲートを設置して、商品には防犯タグを貼り付けておき、レジを通過していない商品がゲートを通ると、ちょっと大きめの警報音が鳴ってお客さんにお声がけする。・・・と言うのが理想でした。

実際には商品の回転が早くて、防犯タグの貼り付けが追いつかなかったり、防犯ゲートは物理的に大きく、お店の間口が狭いのに多くのお客さんが入店するには無理があります。
商品の搬入が多い時を想定してゲートは移動できるようにするため、床に固定されておらず、お客さんが他のお客さんを押すなどして、ゲートが所定の場所からずれてしまい、防犯タグを感知できずに警報音が鳴らないなんてこともありました。
お店の店員の方も日々の業務に忙殺され、防犯意識は低めだったかもしれません。レジに並ぶお客さんの長蛇の列に追われ、防犯タグの解除を忘れてしまったり、そもそも警報音が鳴ってもお客さんに声をかける余裕もない。お声がけできる状況でも同時に多くのお客さんがゲートを通過するため、どの人に声をかけるべきか判断がつかなく、挙げ句の果てには警報音が鳴り止まない防犯ゲートを電源ごと落としてしまうなんてこともありました。

そんな状況を知ってか知らずか、お客さんにまぎれて万引き目的で来店する人が多くやってきます。
まず先に申し上げると、お客さんを見渡せば万引き目的の人を見分けるのはそんなに難しくありませんでした。いま店員をされていらっしゃる方は防犯機の精度が上がり、そこまで見分ける力を養わなくても良いのかもしれませんが、先輩社員が万引き犯を捕まえるのを頻繁に見ていくうちに、店舗配属からそんなに経たずにわかるようになってきます。
私が何かの仕事をしていると、先輩が入店してきた人の特徴と「あいつこれから万引きするから見ておけ」と私に言うのです。
その人はまだ入店してきたばかりなのに、先輩社員はすぐにそれが万引き犯であることを見分けてくるのです。たしかにその人を見ると明らかに態度や行動が他の人と違うのです。また持っているバッグにも特徴があり、万引きしたい商品をスムーズに入れられるような形のものが多いです。あと商品の持ち方にも特徴があり、そういう人たちは高確率で本当に万引きをしてしまいます。

商品を自分のバッグに入れる万引きの瞬間を見れば万引き確定ということで、お店の出口で待ち構えて声をかけるのですが、実はその瞬間を見てなくても、声をかけることが多くありました。お客さんが多くて万引きの瞬間を見逃してしまうのです。
しかしそんな時でも声をかけると、だいたいは万引きを認めるのです。それくらい高い精度で万引き犯を見分けられるのです。
正直、万引き犯ではないこともありますが、その時は謝って終わりです。今なら大きな問題ですが、それくらいやらないと万引き対応ができませんでした。

万引き犯を捕まえた後は、本来なら警察に連れて行くべきですが、よほど悪質ではない限りお店で処理を完結してしまいました。警察に連れて行くと、調書や現場の説明などで店側も数時間拘束されてしまうからです。
大人だったら身分証明書を確認後、その場で買い上げさせる。子供だったら親を呼び出してやはり買い上げさせて終了です。
万引きするものの多くはパソコンやTVゲームのソフトです。レジに出すのが恥ずかしいのか、エッチなゲーム(エロゲー)が多かったと思います。中学生くらいの男の子がアニメ系のエロゲーを万引きして、呼び出されたお母さんがそれを見た時の顔は今でも忘れません。

不謹慎ですが、万引きしそうな人が来ると、日々の仕事に忙殺されている中では、ある種の気分転換のような気持ちにさせられました。そうなると若干楽しみながら万引き犯確保の連携プレーをするのです。万引きする側もセミプロ的な人は居なく、捕まると素直になるケースばかりでした。
たまに捕まりそうになった万引き犯が、走って逃げようとする人もいましたが、刑事ドラマさながらの気分で追いかけて捕まえるなんてこともあります。
今では危険な行為になりますので、今は深追いはしてはいけないのが常識です。ただこちらもそうですが相手にも体力もなく、深追いと言われるほどの長い距離を追いかけずにすみました。

万引きのお店へのダメージは小さくありません。防犯技術も考え方も進歩しているのですが、なかなか減っていかないようです。
しかし捕まる確率も上がり、捕まった後は店舗で完結することはないでしょう。万引きする人にとってはリスクは高まっているはずですので、ぜひ思いとどまってほしいところです。
一方で依存症のように万引きをしてしまう人への理解と支援、そして対策はITを活用して解決できる方法がないかと、いまの仕事で考えたりしてまして、またの機会に書き記したいと思っています。

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