「パスミス減らせ!」でパスミス減ったら苦労はしない。
「パスミス減らせ!」に感じた違和感。
先日チーム内で紅白戦をした。
私はBチームのコーチを担当し、タイムアウトありの実戦に近い形でゲームを行なった。
ゲームの序盤はパスミスが目立ち、Aチームに速攻を立て続けに決められてしまい、点差が離れる展開に。
そこで何処からともなくチームの雰囲気は「パスミスを減らそうぜ。」という雰囲気になり、コートの内外から「パスミス失くそう!」という声がとんだ。
私ももちろんそう思った。だが、少し違和感を感じた。
ゲームでのチーム分け。
年明けから練習が再開して約1ヶ月、紅白戦を行うときは力のバランスが均等になるようにメンバーを組んでいた。
なぜなら、それぞれが個人の力を出しつつ、仲間との協力を図ったり、そのゲームでしか見られないコンビや即興的なグループ戦術を組み立てる力を育むためだ。
春リーグまで約1ヶ月半となった今は、実際にリーグ戦で戦うゲームを想定したメンバーを組んでいる。
そのときに問題になるのが「両チームの力のバランス」である。
せっかく実践に近いメンバーでゲームが出来たとしても、どちらかがミスを連発してしまえばただの速攻ゲームになってしまい、戦術的な練習にならない。
ゲーム中に起こった「パスミス」。
話を戻すと、その日のゲームではパスミスが多かった。
しかし、そのパスミスの原因は技術的なものではないと感じた。
技術的な要素は一朝一夕で身につくものではない。
これまで下手だったパスが一晩寝ただけでとてつもなく上手になることもなければ、逆を言えばとてつもなく下手になるわけでもない。
もし技術的なパスミスなら日頃の試合でもミスを連発するはず。しかし、その日は特にミスが多かった。
原因はおそらく他にあった。
相手のDFは6:0で、その特徴は基本的に自分の決められたゾーンを守ること。
得点の危険があるゾーンの中に入り込んできたプレーヤーに対してはチェックに行くが、危険なゾーンを脅かす心配のないプレーヤーは泳がせる。
Bチームの選手はミスをしないことにフォーカスするあまり、ハンドボールで1番大切なゴールを脅かすためにプレーすることを疎かにしてしまっていた。
タイムアウトをとり、1.2枚目の間を攻めるためにどうしたらいいのか選手たちに具体的に指示を出した。
(あとあと思ったこと、わざわざ具体的な方法は言わずにある程度選手たちに任せたら良かった。)
すると、1.2枚目を攻めるために片側にDFを寄せて、広い1:1を試み、ディフェンスは危機感を感じたのか2枚目が牽制に出た。
センターのプレーヤーは牽制に出てきた2枚目の3枚目のプレーヤーのギャップを見事に突き、得点に至った。
セットオフェンスがシュートまで成立すれば、こちらのリズムになる。セットディフェンスをしっかり守れば速攻のチャンスにもなる。
パスミスが起きていた原因は選手たちの技術的な問題、またメンタル的な問題ではなく(攻撃がうまく機能しないことから来るメンタル的なミスはあるが...)戦術的な見通しが立っていない場合が多い。
まとめ。
ミスが多いからといってミス自体を指摘するのはあまりにも安易でコーチングとは呼べないと思っている。
DFシステムの特徴(強み弱み)と相手ディフェンダーの個性をしっかり理解して、こちら側の選手の強みを活かせるようなゲーム運びが出来るようになりたい。
このように日ごろのトレーニングの気付きを綴ってはみたが、毎日自分の力不足に辟易する。
時間と点差、メンバー交代、チーム全体の戦術、個人へのアプローチなどなど。これら全てを同時進行で考えてリアルタイムで判断を下す。
本当にトップレベルのコーチのやっていることは精密コンピュータ並みだなと思っている。
先輩の日比さんが言うように、選手がトップになるためには才能がある程度必要だというように、コーチにも才能が必要なのかもしれないと言う仮説には納得せざるを得ない体験を辿っている。
しかし、選手同様にそんなことで諦めていては情けなくなってくるし、お前は何をしたんや。そんなにやってへんやろ。となる。
まだまだ頑張ります。
余談ですが…
ハンドボール学会で発表をしています。
ウィングシューターへのアシストパスプレーを世界と日本で比較した研究です。
興味のある方がいらっしゃればスライドやらなんやらをご紹介したいとおもいます。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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本日もお疲れ様でした!
筑波大男子ハンドボール部 森永 浩壽