ストレンジアトラクタカタログへの道
単純な数式が美しく複雑なグラフを描画することがある。これらはカオスやストレンジアトラクタという言葉で表される。数理科学的な解説は他の書物や記事等に譲り、ここでは見た目の面白さや美しさに関しての話をしたい。そして、本稿はストレンジアトラクタカタログ作成のためのロードマップを示したものである。後述するが、これは途方もなく広い宇宙を探検するようなものでもある。もし興味を持たれた方がいたら、是非ともこのカタログ作りに参加してくれれば…と思う。
今から約 30 年前の 1993 年に、J. C. Sprott は "Automatic Generation of Strange Attractors" という論文を発表した。現在、この論文の PDF が公開されているので以下にリンクを記す:
https://sprott.physics.wisc.edu/pubs/paper203.pdf
Sprott は、この論文で、とある形の数式で示される、面白そうなストレンジアトラクタを見つける方法について説明している。あわせて、それらに ID を付ける方法についても言及している。
彼の論文で、彼は自らの方法が必ずしも魅力的な図形を描くとは限らないことを認めている(人海戦術で魅力的か否かを調査し、魅力的であるとは何かの指標を探っている)。
この事実を知った時、メシエの天体カタログを思い出した。ご存知のとおり、無数に存在する天体から天体観測時に注意しなければならないものに番号を付したこのカタログは、今や魅力的な天体のカタログとして知られている。
これと同様に、無数に存在するアトラクタから、魅力的なもののみを収集したストレンジアトラクタカタログが存在し得るのではないか - そんなことをふと考えついた。
現在、私の手元には、Sprott の方法を Processing に移植した、魅力的なストレンジアトラクタである可能性の高いものを提示する Finder というべきものが稼働している。
もう一つは、Finder が見つけた ID の周辺 ID - これは ID の文字列中の 1 文字だけを隣接する文字に変化させたもの - を持つアトラクタを描画する、Explorer というべきプログラムが存在する。こちらも Processing で作成している。
これら 2 つのプログラムを道具として、
Strange Attractor Finder にて、候補のアトラクタおよびその ID を表示させる
Finder で見つかった ID の周辺 ID を手入力して、それらが魅力的なストレンジアトラクタであるかどうかを確認する。
上記の作業を通じ、魅力的なストレンジアトラクタの ID を収集し、画像とともにまとめる
このような一連の作業を行えば、少しずつカタログは充実していくこととなる。
Sprott の推測によれば、魅力的なストレンジアトラクタは大量に存在する。カオス現象として分類され得るものは 10^15 つまり、1000 兆個はあるのではないかと推測されている。そのうち例えば、0.1% が魅力的なストレンジアトラクタであったとしても 1 兆個は存在することになる。
そのため、このプロジェクトはそんなに簡単に終わらない。現在 SA (Strange Attractor) Finder や SA Explorer の公開を準備しているので、本稿に興味を持ってくれた方は、是非ともこのカタログ作りに参加して欲しい。
多くの人々が参加してくれると大変嬉しく思う。
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