思惑の行方
今日も弟がお嫁さんを連れてごはんを食べに来ている。いや、正確には二人の子どもたちも連れてだ。
うるさい。ほんとうにうるさい。
躾のなっていない子どもって、なんてうざいんだろう。ああ、いやだ。上の子はもう小学生になっているんじゃなかったかな。なのになんで座って食べられないんだろう。ちっともかわいくない。いやむしろ嫌いだ。
派手な音がして、コップが倒れてお茶がぶちまかれた。
あーあ。
お嫁さんは「すみませーん」なんて言いつつ、少しも片付ける気配がない。ふざけていてコップを倒した長女にも何も言わない。長女は笑いながらどこかに走っていった。まだ、みんな食事中なんですけど? わたしの部屋は鍵をかけてあるから大丈夫。以前、勝手に部屋をあさられて以来、そうして少しも悪いと思っていない「すみませーん」という態度に接して以来、わたしは自室に鍵をかけた。弟はいつも空気でもちろん注意したりしない。
「ドアがあかなーい、あけてー」二階からキンキン声がする。わたしは黙ってお味噌汁を飲む。無視だ、無視。
「そのお部屋はお姉ちゃんの部屋だから入ってはいけないのよ、ごめんね」
なんで謝るんだ、母よ。わたしたちを躾けたときとは随分違う。母は手に台拭きを持っていた。汚れは全て母が片付けた。「おねえさんたら、何もしないのね」って顔で義妹がわたしを見てくる。
「あたし、おねえちゃんだから、ここ、あたしのお部屋でしょ!」またもやキンキン声。
「そこは大きいお姉ちゃんのお部屋なのよ」と母。
「えーーーーー」
「大きい」に反応して、義妹がくすくす笑う。この弟のお嫁さんは若くして結婚して、若くして子どもをもうけたことを自慢に思っていて、いつまでも結婚しないわたしのことをばかにしているのだ。結婚していることがそんなに偉いのかよ。食費にすら困って、しょっちゅう実家にごはんを食べに来ているくせに。いつの間にか二階に行っていた下の子と一緒に上の子が戻ってきた。「はるかも、自分のお部屋ほしー」
まあ、あの狭いアパートじゃ、無理だね。
「ここなら、たくさんお部屋あるのにねえ」って、義妹、何言っちゃってんの。二日と空けずごはん食べに来るだけでも迷惑なのに。
……やっぱり、これはこのうちを狙っているんだなあ。しかも、母という家政婦さんつきの。「お姉さんはお金もあるし、結婚もしていなくて身軽だからマンションで一人暮らしでもすればいいんですよ。お義母さんにはわたしたちがついていますから! 孫もいて賑やかな方がいいでしょう!」なんていう幻聴が聞こえた気がした。
でもね、実はこの家、わたしの名義なんだよねえ、お嫁ちゃん。父が亡くなったときに相続して名義はわたしになったの。それに実は母は認知症の症状が出ているから、家政婦にするのは無理だと思うよ。孫が来ると、昔に戻って普通に見えるだけ。義妹はともかく弟はなんで、母の様子分からない分からないかな。まあ別にいいけどさ。