⑳「シン・開業医心得」 第2章の2より 医療報酬あるいは介護報酬の点数(単位)制度 その2
その他の、こじこうじの作品へのリンクは
太陽の秘密 | こじ こうじ |本 | 通販 | Amazon
アベマリア | こじ こうじ |本 | 通販 | Amazon
アペリチッタの弟子たち | こじ こうじ |本 | 通販 | Amazon
Youtubeに紙芝居絵本「ものほしざお」があります
https://youtu.be/iGRwUov3O74?si=bH2ZszSCB6b6fquq
「シン・開業医心得」 目次
プロローグ
第1章 シン・開業医心得
1 世間で時々聞く「医者に殺されないように」という文句に殺されないように
2 開業医での経験
第2章 開業してようやくわかる医療制度の問題点
1 たまに話題になるが、よく知られていないことがらについて
2 医療、介護制度の盲点
エピローグ 提言
第2章の2より
医療報酬あるいは介護報酬の点数(単位)制度 その2
介護報酬も医療報酬のように、その介護行為が「点数」化されている。医療行為に比べると、それは単純で、大きく 生活援助、身体介護にわかれる。
だが、実は、介護の基本、高齢者と会話する、優しい言葉をかける行為、は介護現場でどんなに頑張っても「介護報酬」として数字にならないのだ。
お金にならなくても、当たり前だからやる、と言う風には、残念ながら人は必ずしもならない。
むしろ、介護報酬にならない、そんな声掛けは「無駄」という風潮が、介護現場にどんどんひろがっていないか?
また、デイサービスは、「家族の介護の負担を一定時間減らしている」ということで、その内容に関わらず、介護報酬がつく。そのため、そこの標準サービスは、かなりレベルが低いのではないか?なにせ、あの「長谷川式スケール」を開発した認知症研究の第一人者である長谷川先生でさえ、自分が認知症になっても、けっしてデイサービスには行かなかったというのだから。
また、介護報酬として制度として設定されているこれらの金額が低く設定されているのも問題である。
訪問介護は、1時間の介護報酬が2700円でしかない(同じ行為を看護師がすると、その看護報酬は2倍の5400円。また、同じ行為ではないが、医師の場合は1時間で、介護士の4倍くらいの医療報酬が提供される)。
介護士の時給1000円x2.5時間=2500円。もし、訪問先の家が、遠く(?)にあると考えよう。往復の時間や準備時間を考えると、実際は、1時間の訪問介護に要する時間は、2.5時間くらいだろう。そうすると、2500円は、介護士の時給で相殺されてしまう。
これらの問題が、間接的に、介護士の量の不足、質の低下に悪影響を与えている可能性は大いにある。
開業医になると、地方自治体の開催する、「要介護度認定委員会」に出席する機会がある。
ここでも、人間の行動は、細かく数値化されている。
寝起き、おきあがり、坐位保持、両足での立位、歩行、立ち上がり、片足での立位、洗身、爪切り、嚥下、食事摂取、排尿、排便、口腔清潔、整髪、上衣の着脱、ズボン等の着脱、外出頻度、被害的、作話、感情が不安定、昼夜逆転、同じ話をする、大声を出す、介護に抵抗、落ち着きなし、独りで出たがる、収集癖、物や衣類を隠す、独りごと一人笑い、話がまとまらない・・・。
介護経験がばらばらな調査員が、これらの、ランダムな評価項目について、主観をまじえて、チエックをいれ総合するだけで、コンピューターは、要支援1,2から要介護1~5まで、その人の要介護度を、意外に妥当な線ではじきだしてくれる。
われわれ、「要介護度認定委員」は、そのコンピューターのはじきだした結果が、大きくまちがっていないか?みるのが主な仕事である。
つまり、「要介護度認定」の判定の主役は、既に、この10年以上、コンピューター(AI)なのである。
もちろん、この10年間、AIは、われわれ、「要介護度認定委員」が、コンピューターの判断が間違っていると訂正した、そのデータも参考にして、年々その「要介護度認定」の精度を高めている。
と、いいたいところだが、実際のところ、その精度は、年を追ってもかわっていない、というのがぼくの印象だ。おそらく、調査員のレベルがあがっていないためだと予想される。
そして、なにより、実際に人を観に行かず、文書やデータ?だけで「介護度」を判断するというのは、所詮無理な話なのだ。
介護報酬をめぐっては、他にも様々な問題がある。
例えば、家から、高齢者施設に入居すると、その高齢者の要介護度があがる傾向がある、のだ。これは、高齢者施設では、介護の効率性を優先するために、その高齢者が或る行為に時間を要すると、「待たずに」、途中から、あるいは、最初から、かわりにやってしまう、ためだと考えられる。
あるいは、要介護5なると、介護報酬があがるが、実は要介護3や4に比べると、介護の手間がへる。要介護5がもっとも介護に使える単位が多いというのは、単に制度の整合性(介護度が高いほど、介護報酬を増やすべき)のためのような気がする。
「介護度が高いほど報酬が高い」ことが誤っていることは、ほとんどの介護士は現場で知っている。もしかして、知らないのは、「制度」のほうだけかもしれないのだ。
今の「要介護認定」の方法を介護報酬の大小とむすびつけることは完全に誤りである。
この評価の方法を、各施設で利用するのは悪いことではない。だが、これを全国共通の尺度として、普遍的な介護報酬単位とむすびつけるのは誤差がおおきすぎる。
この、今の介護報酬制度は、この「要介護認定」の方法をその根本としている。
その不備が明らかになっている以上、現在の介護報酬制度は、その根本から再考すべきだと思う。
①へのリンク: ①「シン・開業医心得」 プロローグ|kojikoji (note.com)
㉑ヘのリンク: ㉑「シン・開業医心得」 第2章の2より 医療報酬あるいは介護報酬の点数(単位)制度 その3|kojikoji (note.com)