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⑭「シン・開業医心得」 第2章の1より 手術ロボットより採血ロボットを!

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「シン・開業医心得」 目次

プロローグ
第1章 シン・開業医心得 
 1 世間で時々聞く「医者に殺されないように」という文句に殺されないように
 2 開業医での経験
第2章 開業してようやくわかる医療制度の問題点
 1 たまに話題になるが、よく知られていないことがらについて
 2 医療、介護制度の盲点
エピローグ 提言
 

第2章の1より 

手術ロボットより採血ロボットを!
 
 もう外科医をやめて10年だ。最先端のロボット手術のことなどよくわからないだろうに。だったら何もいうな。
 そんな声が聞こえてきそうだが。
 でも、ロボット講演会に行っても、技術の進歩の議論はあるが、「そもそも、ロボット手術は必要なのか?」といった根本的な議論はない。
 当然といえば当然だ。もう既に、ロボット手術を推進しようと決めた人が、ロボット手術は必要か?と問うことは決してない。だから、「ロボット手術は不要」ということは、ロボット手術をしない外科医から問題提起されるべきものなのだ。
 
 ぼくが外科医をやめた理由のひとつが、そのころから普及し始めた『腹腔鏡手術』に意味があるとは思えなかった、ということは前に少し書いた。『腹腔鏡手術』は開腹手術に比べて治療成績を向上させない。それなのに、機器にお金がかかる上に、外科医や看護師不足にもかかわらずより多くの人がいないと成立しない。
 ロボット手術など、この点に関して『腹腔鏡手術』どころではなく、もっと著しい。
「でもさあ、僻地で、医療者がいないところで、遠隔操作でロボットで手術ができたら助からないかい?」
「バカいえ。僻地でロボット手術をするためには、そこに外科医はいらないが、多くの訓練された医療スタッフがいるんだよ。ひょっとしたら、普通の手術をするため以上のスタッフが必要になる。そして、1億円もするロボットを設置しなければいけない。それだけのお金があれば、診療所一つつくれるよ。ナンセンス、それだけ」
「そうか。そういうものか」
 このロボット手術批判は、半分以上当たっているだろう。
 だが、実は、それだけではない。
 ぼくがまだ若い外科医だったころ、「腹腔鏡手術」の練習期間ということで、今は偉くなった外科医と共にいた若い外科医には研修のための手術症例がまわってこなかったという過去を知っているからだ。結局、執刀医を経験する機会がなければ、いくら助手をたくさん勤めても、手術は身につかないものなのだ。
 外科医は最初から手術できるわけではない。指導医のもとで、いくつも手術のトレーニングをして一人前になっていく。
 だが、その、「今でこそ偉くなった」外科医は「新しい腹腔鏡手術を自分で身に着けるため」、若い外科医に一切手術をさせずに、自分で手術を独占してしまった。それは、数か月どころか、数年に及んだ。そして、そこの医局の若い外科医は、訓練の場がないという理由で、他へと移っていった者も少なくなかった。
 
 かわりに、ぼくが提案したいのは、「採血ロボット」の開発だ。
 ここでいう「採血ロボット」とは、医師がそれを遠隔操作することによって、人への血管穿刺をするシステムのことだ。
 ドローンに採血ロボットをのせて、へき地にとばして、そこで遠隔で医療を行う。ここでの医療は、WEBカメラによるアドバイスや診断、採血ロボットを医師が遠隔操作しての採血、そして点滴だ。
 もちろん、ドローン+採血ロボットでは、手術まではできない。でも、実際、手術は遠隔でおこなう必要があるのだろうか?
 救急対応の方法を、WEBカメラでみた医師が、その周囲の人にアドバイスすればいいのではないか?あるいは、例えば採血ロボットを患者の傷近くまでもっていってもらって、あとは遠隔操作でアームを医師が動かし圧迫止血するくらいはできるかもしれない。いずれにせよ、採血ロボットを用いて遠隔で医師による針穿刺をおこなうにしても、患者の腕を固定する周囲の人の協力は必要だ。だが、その周囲に人は、手術を介助するような特殊な知識や技術は必要ない。
 調べても、この「採血ロボット」を開発しようとしている研究者たちはまだいないようだ。
 
 ドローンは、戦争兵器としての能力がもっとも評価されるだろう。
 だが、こんな牧歌的な、ドローンの利用も(まだ平和な)日本なら許されるだろう。
 コラボしてくれる研究者、募集中!


①へのリンク: ①「シン・開業医心得」 プロローグ|kojikoji (note.com)
⑮ヘのリンク: https://note.com/kojikoji3744/n/nfc52d6228b85?sub_rt=share_pb

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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