オヤジに転職を伝えたら
48歳の転職おじさんです。こんばんは。
はじめたばかりのnoteが面白くて、最初は1週間で4本書いたのに、ちょっと忙しくなると何も書かずに2週間が過ぎました。
人生で9社目となる転職先を決めたおっさんは、最近、勤務初日に向けて、新しい会社の人事や総務の方とのやり取りが増えてきました。
そんな中、会社から届いた提出書類の案内を眺めていたら、むむっ!と唸った書類がありました。身元保証書のサイン欄です。
48歳バツイチおっさんの場合、保証人の候補は、両親、兄弟、彼女、自分の会社の役員、、、といくつか浮かびましたが、身元保証人という字面の重さから、ここは親にお願いするのが妥当かな、という理由でオヤジに電話をしました。
呼び出し音が鳴っている間、かすかな不安がよぎりました。『ソーシャルトランスフォーメーション日本一を目指す会社に転職します』と伝えたところで、うちのオヤジは理解できるのだろうか?
今日は48歳のおっさんが、アラハチのオヤジとオフクロに転職を伝えたハナシを綴ってみようと思います。
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そのときオヤジは、畑仕事の最中だったらしい。
『もしもし、○○です。お久しぶり。元気?』
『はいー。あー。おー。うん。』
オヤジの応答はいつ電話してもこんな感じ。ボソボソ話す口調。喜怒哀楽が感じられないトーン。いつだかじーちゃん(オヤジの父)の危篤を知らせる電話のときも『もうダメかもしれないな』と主語もなく、ただそれだけ伝えてきた人だ。
『あのですね、オレ、今度、転職することにしたのよ。それでオヤジにサインして欲しい書類があるんだけど』
『うん、うん、わかった。いつよ?』
『明日か明後日はどう?』
『ん。明日がいいな』
『じゃ明日、行くわ。』
『わかった。何時よ?』
こんな感じで翌日、身元保証書にサインをもらうためにオヤジと約束をした。実家近くのコメダ珈琲のミルクコーヒーが大好きなオヤジは、いつものコメダを指定してきた。
当日。彼女がうちの両親へと買ってきてくれた焼き菓子を持たされて、実家(の近くのコメダ)へ向かった。車でも電車でも1時間もあれば着く距離は、その近さが壁にもなる。いつでも帰れるその距離は、結局、滅多に帰らない距離になる。最後に帰ったのは心不全で鬼籍に入った幼なじみのバビの葬儀のときだ。
社会に出て最初の7年間、スポーツチームで働いてきたおっさんは、入社のときも、チームが変わるときも、両親に詳しく説明をしてこなかった。
『○○○に入る』『○○○に移る』『○○○に行くわ』。
大げさでなく、10文字程度の報告をするだけで、特にスポーツ好きなオヤジとは意思疎通がこと足りた。『強そうなチームだな』『○○○がいるところか』『いま監督だれだ?』
30代の頃は社長が時代の寵児と呼ばれていた会社だったり、大学勤めが続いていたので、同じく説明がラクだった。なんなら仕事を変えるたび、メディアが報道もしてくれた。ファンがいる企業や公的な組織で働くというのはこういう時にラクなんだな、とコメダに向かう道中で改めて気が付いた。
そういえば今朝、新しい会社の人事に送ったメールの返信を待っていた。今度の会社は業務領域が多岐におよぶので、働いているセンパイスタッフに、自分の会社のことを身近な高齢者にどう説明しているのか、尋ねてみた。
コメダに着くとちょうどオヤジとオフクロがミルクコーヒーを頼んでいるところだった。立ったままの姿勢でウェイトレスさんに、同じのをもうひとつください、と伝えてオフクロの隣のボックス席に腰かけた。
久しぶりに会うオヤジとオフクロは、また少し縮まったように見えた。オヤジはひと言、おぅ、と言った。元気だった? と聞いたあとはひとしきりオフクロのおしゃべりを聞いた。
引っ越しを機に実家に預けた駄犬の話が半分で、あとは体調のこと、昨日の晩ごはんのこと、あとなんだっけな?
ミルクコーヒーと豆菓子が3つ運ばれてきた。彼女からの手土産を渡してメールをチェックした。センパイからの返信は、まだ届いていなかった。新しい会社から届いた封筒を取り出して、仕事を変えた経緯と、新しい会社のことをふたりに話しはじめた。
すごくざっくり括ると、新しい会社と前職は似た職種なので、オヤジとオフクロには前の会社に似てるけど、もっとデジタルの世界で仕事をすることに決めたよ。デジタルってわかる? オヤジが苦手なあれね。そんな話をした。
オヤジは何も言わないで聞いていた。オフクロはときどき若干ピントのずれた質問をくれながらニコニコ顔で聞いていた。半分くらいわかってくれたらいいな、そんなふうに思いながら話をして、保証人の欄にふたりからサインをもらった。オヤジの書いたフルネームも、オフクロが書いたフルネームも、めったに目にする機会がないからいとおしく思えた。
そういえば最近、都内に引っ越したんだけど、新しい住所を両親に伝えてなかったことを思い出した。会社から送られてきた封筒に、新しい会社のロゴ入りのクリアファイルを入れてオフクロに渡した。新しい住所はここ(封筒)に書いてあるからね、と伝えて、実家に寄って犬と散歩して帰った。
朝のメールに返信があったのは、家まであと数駅という帰りの電車の中だった。センパイはわざわざ人事部のみなさんにも確認してくれたようで、
とても丁寧な返信だった。まだ入社前なのでお会いしたことはないけど、人事部のみなさんが丁寧にコミュニケーションしてくれたことが嬉しかった。
さっきオフクロからLINEが来た。焼き菓子のお礼のあとに、こんなことが書いてあった。
『おとうさんがきれいな字だと感心していました。いい会社に入れてよかったね』
愚息の話が伝わったかどうかはわからないけど、人事のNさんのキレイな手書きの宛名は、オヤジの心に届いたみたいで、自分は何もしてないけど、少しだけ親孝行したような気分になった、ちょっと楽しい転職報告でした。