数学者から世界一の投資家へ:ジェームズ・シモンズとその発展
以前に、数学から物理のイノベーションが生み出されたケースとして、結び目理論について紹介しました。
上記文中にある「チャーン・サイモンズ理論」が、従来独立に考案された物理法則の架け橋になり、その最終候補である「超ひも理論」にも間接的に貢献しています。
このチャーン・サイモンズ理論の名称由来となったのが、数学者のジェームズ・シモンズ氏です。
今年(2024年)に亡くなったのですが、結構色んな分野で有名な方ですので、そのなかで有名な話を取り上げたいと思います。
世俗的な話から入ると、この方は自身の数学的知見をもとにヘッジファンドを創立し、一時期は(あのジョージ・ソロスを抜いて)業績でも世界1位にもなりました。このあたりに興味のある方は下記記事がお勧めです。
そのベースとなる数学理論も広義(ビッグデータからパターン発見)のAIなので、AIが経済に影響を与えたという意味では、今の深層学習及びLLMブーム以前から広く影響を与えているといえます。
それ以前は、冒頭触れた位相幾何学(トポロジー)だけでなく、暗号の専門家としてその名を馳せていました。
この辺りは純粋数学で全く理解が追い付かないのですが、逸話としてはIBMが開発した暗号ルシファー(DESの前身だそうです)の解読を依頼されたこともあります。あとは、少々きな臭い話ですが、敵対国の暗号解読にも国家指示のもと携わったこともあります。
このあたりのくだりは、彼が人生を語った下記記事に描かれています。
晩年は自閉症や教育など社会課題への慈善活動にも力を注いでいます。
本人が登壇した下記のTED動画は、彼のコミュニケーション能力の高さが感じられると思います。
冒頭の「超ひも理論」への貢献に話を戻します。
彼とは別の文脈で、今「AIと超ひも理論」のつながりが注目されています。
特に目立つのが、日本の橋本幸士氏が中心となって提唱している「学習物理学」という新しい分野です。最近書籍を発刊されたので載せておきます。
まだ拝読はしていませんが、以前より下記の書籍内でたまたま知り、とても歯ごたえがありますが相当な知的刺激を与えてくれました。
余談ながら、12/10から橋本氏含む京都大がホストする「データサイエンスと超ひも理論に関する国際会議」が開かれる予定です。
もしかしたらシモンズがまいた種もこの会議の中ですくすくと育っている様子を観察することが出来るかもしれませんね。
この学習物理学の動向についても、もう少し理解が追い付いたら具体的な中身についても紹介してみたいと思います。