次世代エネルギー資源と月の可能性
今年に入って、次世代エネルギー核融合トピックが増えてきた気がします。先日もこんなニュースが流れてきました。
核融合エネルギーとは、水素->ヘリウムの原子核反応からエネルギーを取り出す原理です。
その実現方法にもいくつかタイプがあり、それぞれ長所・短所があることは以前にも投稿しました。
今回の研究成果は、上記過去投稿分類でいうと磁気で閉じ込めない「常温型」になります。
その代わりに「レーザー」を使います。
レーザーは日常的にもよくつかわれるようになりましたが、元々”Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation”の略語で、直訳すると、「誘導放射による光の増幅」です。
なにげに基礎理論はあのアインシュタインです。その工学的発明が1950年代に行われ、既にその時点で今回の核融合への応用可能性が記されています。
冒頭記事に戻りますが、まだ基礎研究の進展で、実用化は今主流(磁場閉じ込め方式)かそれより先の21世紀中旬以降とのことです。
ただ、核融合炉自体を1億度(プラズマ化に必要な温度)にする必要がないので(レーザーで1点集中させる)、施設をコンパクトにできるのは期待したいところです。
せっかくですので、今まで紹介していない、かつ別の文脈でも期待されている「月」の資源を活用したパターンも紹介しておきます。
先に言っておきますが、現時点ではまだまだ未知数ですし、そもそも月資源の取り扱いがまだ国際的な協調が求められる段階です。
それは月に存在する「ヘリウム3」と「永久影」を使った月面上での核融合炉です。
冒頭記事に「ヘリウム4」とありますが、これは陽子2・中性子2を合わせた数です。この中性子が1つのものを「ヘリウム3」と呼ばれ、地球上には極めて微量で、太陽風にさらされた月面のほうが高濃度に存在します。
そのヘリウム3と重水素(中性子が2つ)を核融合させて、ヘリウム4+αを生成する過程でエネルギーを獲得するのが原理です。
主流のヘリウム4と違って、中性子が放射されない(それをコントロール必要がない)のが利点です。
ただ、それには他のやり方同様に数億度でプラズマ状態にしなくてはいけないのですが、このときに登場するのが「永久影」です。
名前のとおり、太陽エネルギーが届きにくい冷え冷えの場所で、ここに氷資源が期待されています。
核融合炉とのつながりは、そこが自然に「超低温」であることです。
今主流の「磁気閉じ込め方式」では、超電導の仕組みを使って効率的に磁気を発生させるやり方があり、超電導状態にするには「超低温」にする必要があります。
ということで、もう想像ついたと思いますが、この永久影で核融合炉をつくればとてもコスパがよいのでは、と期待されているわけです。
繰り返しですが、まだ研究どころか資源採掘や調査が進んでいる段階です。
そして、月資源を各国がどのように協調的に取り扱うかは結構微妙なところです。
直近ですと、今現在進行形で進んでいる「アルテミス計画」を踏まえた「アルテミス合意」内に宇宙資源への言及がありますが、ロシア・中国など宇宙開発先進国は批准していません。
エネルギーは人類が持続的に生存するうえでは必要不可欠ですが、その獲得競争が生存を脅かす、または人類全体の幸せをゆがめるようなことがないように願うばかりです。
いずれにしても、こういった重要な基礎研究をされている方に敬意を表して締めたいと思います。
<参考文献>