シャンパンボトルの物理学
物理にはまだ謎が残されており、積み木のように過去からの知見を基に新しいブロックが築かれていきます。
特に多くの方が関わってバベルの塔のごとく天に届かんと高く積まれてきたのが、「素粒子の標準模型」です。
近年その修正を迫る現象が話題になっていますが、2012年に発見された「ヒッグス粒子」のニュースはお茶の間でも話題になりました。
ヒッグス粒子はその理論が難解であるため、親しみのある比喩を使います。
よく耳にするのが、シャンパンボトルの底に似ているため、「シャンパン・ボトル・ボソン」という名前です。
シャンパンボトルと言えば、めでたいときに栓を飛ばす儀式(?)が有名ですが、あの所作には何気に深い物理学上の研究テーマがあります。
それに関する記事が最近投稿されているので紹介します。
ようは、
シャンパンがはじける現象を初めて物理的に解明した、
という話です。
逆に、あんなよく見る風景が謎だったことに驚きました。
直感的には、振ることで内部の圧力を高めてその力でロケットのごとくコルクを飛ばす、というイメージでした。
内部にはガスが充満しているわけですが、今回の研究でなんとそのガスの流れが音速を超えていたことが初めて明らかになりました。
具体的には、コルクの速さは秒速20メートルですが、ガスの速さはなんと秒速400メートルに達します。
ガスの圧力が急激に変わることで、温度も急激に変化します。なんと最低‐130度にまで冷却され、それが炭酸の泡(CO2)からドライアイスの結晶を形成することにつながります。
ちょっと細かいですが、ボトルの温度によってその時の冷たい煙の見え方も変わってくるというなかなかそそる研究成果も触れています。過去にはそこに注目した研究内容もありました。
煙もそうですが、一番のクライマックスは、やはりコルクが抜ける「ポン」という音ですね。
実はこれが単一の物理現象でなく複数の作用が組み合わさったものだったということが今回の研究で明らかになりました。
まずは、ボトルから抜けた直後に急激に膨張したときの圧力波による音が発生し、その直後におこる超音速ガスによる衝撃波の音も続きます。
後者は航空機ではおなじみですが、「ソニック・ブーム」と呼ばれます。
今回は、コンピュータのシミュレーションでやっと明らかになりました。
元論文からイメージ画像を貼っておきます。
こんなめでたい何度となく目にした儀式の中でも、謎が隠されていたことに驚きですが、それを研究しようとする方々がいるというのも拍手喝采です。
以前に、猫のひねり問題を取り上げたのを思い出しました。
問題は解くよりもそれを発見することが大事、とどこかで聞いたことがありますが、シャンパンの底は意外に深そうです。
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