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DNAを使った極小の輸送システム

DNAの編集はもはやニュースであふれ珍しくなくなりました。

ところが、それをレールにモノを「運ぶ」極小マシンの研究成果が朝日新聞でとりあげられていました。


要は、
生体分子モーターとDNA結合タンパク質を組み合わせることにより、DNAナノチューブ上を移動するタンパク質ベースのモーターを開発した、
という話です。

もっと砕いていうと細胞レベルの輸送マシンの開発です。

上記記事まで深堀するのはちょっと・・・という方は文中に張られたYoutube動画だけでもご覧ください。後半に実動画も登場します。

一般的に、生命活動を構成するタンパク質は、事前にプログラムされた役割をになっておりその外部制御は困難です。

DNAの編集自体はもはや驚かなくなりましたが、今回気になったのがそれも援用して作られた「DNAナノチューブ」です。

仕組みを簡単に言うと、通常細胞内でものを運ぶときは、タンパク質で構成された細胞骨格繊維と呼ばれる天然のレール上で動きます。

このレールを今回「DNA」で人工的に設計したのがまずはユニークなポイントです。

DNAは遺伝子を運ぶ物質、として知られていますが、その情報要素(プログラムコードのイメージ)にあたる塩基配列を修正しやすい利点があります。
その使い勝手の良さで、ナノスケール(10のマイナス9乗!)でミクロな構造物を創る建築材料としても評価が高まっているわけです。
今回も、レールとレール結合個所を塩基情報(AGCTの4種類)の組み合わせを変化させることで動力を与えるというなかなかの離れ業をやってのけました。

ここまでくるとピンとこないと思うので例えると、リニアモーターカーは、磁石の反発する力(NとNとか)を使って動かしています。
塩基も同じように、その組み合わせによって繋がろうとしたり解離しようとします。
今回の仕組みでも、レールと車輪それぞれで塩基を制御して、引き合わせたり、乖離させたりして動力に変えているということです。
(ちょっと強引なたとえですがイメージだけでも・・・)

元々DNAは二重らせん構造ですが、今回はその強度も高めるために、それらを10個を束にしたチューブを設計しています。

これが人工的なナノチューブの仕組みです。

しかも、もっとすごいと感じたのが、そのレールをY字型に組んだことです。
子供の鉄道模型では自由にレールをつぎはぎしますが、それを分子レベルでやってのけたわけです。

解説内に「DNAオリガミ」というそそる表現が引用されてますが、これは2006年に開発された2次元型のナノ構造体のことで、折り紙のごとく畳んだりして変形させることが出来ます。

興味を持った方は解説サイトを1つ紹介しておきます。

今回は、新しい発明というよりは、既存技術を組み合わせたナノレベルでの交通インフラです。
今回はY字型ですが、原理を使えばあとは工学的な課題なので複雑なレールを敷くことが出来るのは間違いないと思います。

となると気になるのは応用方法です。

理学視点では、ある意味デジタルコンピュータの原理ともいえる「チューリングマシン」の再現、つまり生体コンピュータ開発に貢献できそうです。

工学視点では、薬を届ける役割がさっと思い浮かびます。ナノロボットを使ってピンポイントに薬を注入するという話はよく聞きます。今回のレールが何かその輸送手段に貢献できるのではないかと想像しました。

いずれにしても、これは画期的な成果だと思います。DNAをベースとした研究はますますヒートアップしていきそうで、注目していきたいと思います。



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