ビッグバンに物申した「林忠四郎」
「林忠四郎」賞の2023年度が発表されました。
カブリに所属する高田昌広 (たかだ まさひろ) 教授です。
すばる望遠鏡を使ってダークマター説のうち、原始ブラックホールの範囲を絞り込んだこと(この説が全て否定されたわけではない)、
が主な受賞理由です。
こちらについては、過去に紹介したことがあるので引用に留めておきます。
今回は、この賞由来「林忠四郎」氏の業績についてしらべてみました。
宇宙の形成において業績のある方で、特に知られているのは「恒星」の形成に関する仮説です。林忠四郎氏は京都で研究人生を過ごしたため、その研究グループは「京都モデル」と呼ばれます。
過去にも紹介した記事を載せておきます。
上記記事は、その過去の京都モデルと異なった説を紹介していますが、まだ定説までには熟成されていません。
ただ、これより前に、林忠四郎を世界的に有名にしたのが「ビッグバン」理論の修正です。
こちらも、さらっと歴史の流れはふれたことがあるのでいったん引用しておきます。
上記ではふれきれなかった、その指摘内容について。
「ビッグバン理論」は、宇宙の爆発、という情緒的なイメージが先行しますが、その提唱者でしられるガモフの意図は少々違います。
有名な話ですが、ビッグバンという言葉じたいも、論敵の一人がラジオでガモフの説を揶揄する文脈で使われたレトリックでした。それを「こりゃいい」とマーケティングしたわけですね☺(ブラックホールもやや似てます)
ガモフは、初期宇宙が膨張する過程でどのように元素が生成できるのか、そのメカニズムを提唱しました。
ちなみに、ガモフと共同研究者ラルフ・アルファー・ハンス・ベーテの3名で発表し、その名前の語呂合わせで「アルファ・ベータ・ガンマ理論」と呼ばれます。
有名な話ですが、この呼称を使いたいがために、ガモフは強引にベータを巻き込んだと言われています。都市伝説に聞こえますが、結構ガモフはやんちゃとして知られていました。(上記のビッグバン由来もそうですね)
話を戻します。
で、この理論を林忠四郎が読み、素粒子(原子核を構成する陽子・中性子・電子など)相互作用がどのように時系列で変化するかを計算しなおした結果、ヘリウムより重い元素は初期宇宙では生成できないことを論文として発表しました。
結論として林の指摘は正しいことが分かり、元論文も修正されました。
ですので、この理論は「アルファ・ベータ・ガンマ・ハヤシ理論」と呼ばれることもあります。一気に語呂が悪くなりましたが、あくまで研究活動なのでそれは二の次ですね☺
林忠四郎の功績は、日本学士院でも紹介されていますので、ぜひ興味持った方は覗いてみてください。
この林忠四郎に学んだメンバーは、今でも世界の素粒子物理学のフロントランナーを走っています。
つまり、今回の賞だけでなくその存在は間接的に感じることができます。