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AI版マンハッタン計画の衝撃:地政学の中のテクノロジー

以前に、イーロン・マスク氏が行政改革を率いる話をしました。

最後にちらっと、AIについても政策として大きな動きがあるかも、と締めましたが、さっそく注目の流れがあったので記事を紹介します。

マンハッタン計画、とは第二次世界大戦での米国の原爆開発計画で、最高峰の科学者を総動員したのは有名な話です。

今回のネーミングセンスはともかく重要な内容は、
米国が官民団結してAGIを開発を推し進める、
という提言を含めている点です。(あくまで1委員会による提言で政府としての実行検討はその次)

提言組織は「米中経済安全保障調査委員会」で、名前の通り特定の国との安全保障に関わる戦略について記されています。

11/19に公開された年次報告書(下記サイト)から重要なポイントを要約します。

今回はあくまでAIに絞りますが、科学技術の観点では下記の要素を危惧しています。
・バイオテクノロジー
・AI
・量子技術
・バッテリー技術

以下の引用はAIに絞った要約です。

1. 人工汎用知能(AGI)プロジェクトの創設
背景:AGI(Artificial General Intelligence): 特定のタスクだけでなく、人間が行うあらゆる認知タスクを同等またはそれ以上に実行可能なAI技術。
中国は国家主導でAI開発を進め、特に軍事・経済分野で競争力を向上させており、米国にとって戦略的リスクとなっている。

具体的な提案:「AI版マンハッタン計画」の立ち上げ
AGIの研究と開発を進めるため、国を挙げた包括的プロジェクトを設立。
財政支援を長期的・大規模に実施し、主要研究機関や企業が計画に参加。
国防優先供給(DX)指定
半導体やクラウドリソース、データ処理インフラなど、AI関連の重要資源を国家安全保障の観点から優先供給リストに追加。
国防生産法を活用して、AI関連製品の国内供給を安定化。
連邦予算と契約権限の拡大
AI研究に参加する企業に複数年契約と特別予算を提供し、短期的な資金不足を回避。
連邦政府の助成金や融資プログラムをAI企業に適用。

2. 輸出管理と規制の強化
背景:中国が米国の先端技術を入手することを防ぎ、AI関連技術が中国の軍事的優位性に利用されるリスクを軽減する必要がある。
具体的な提案BIS(産業安全保障局)の強化
輸出管理業務を担当するBISに、以下の資源を提供:
人材拡充: データ分析の専門家、エンジニア、規制の専門家を増員。
分析能力の向上: 専門データセットやAIを活用したデータ解析ツールの導入。
省庁間連携の強化: 商務省、国防総省、エネルギー省、諜報機関との協力体制を構築。
輸出ライセンスの透明性向上
エンティティリスト(制裁対象リスト)に記載された中国企業へのライセンス発行状況を議会に定期報告。
統合タスクフォースの設置
目標: 米国の輸出管理政策の一貫性を確保し、中国へのAI技術の流出を防止。
商務省、国防総省、エネルギー省、諜報機関から構成されるタスクフォースを設置し、新規制や制裁措置を提案。

3. アウトバウンド投資の監視
背景:米国企業が中国AI企業に技術移転や資本提供を行うことで、中国のAI開発を間接的に支援するリスクがある。
具体的な提案アウトバウンド投資監視機関の設立
新たな連邦機関を設立し、特定技術分野への投資を監視。
「通知制度」を導入し、中国市場での投資活動の詳細を事前に把握。
投資規制の拡大
輸出規制対象分野(AI、半導体、量子技術など)への投資を事前承認制とし、リスクが高い案件を禁止。

4. AI分野における国際連携
背景中国が国際市場でのAI技術導入を進め、途上国や権威主義的政権に監視技術を提供している。
具体的な提案同盟国との輸出管理の調整
米国、EU、日本、オーストラリアなどの同盟国と連携し、輸出管理の基準を統一。
AI関連技術の不適切な移転を防ぐ国際的枠組みを構築。
国際市場での米国技術の競争力強化
米国製AI技術の競争力を高め、国際市場でのシェア拡大を促進。

5. AIにおける倫理と安全性の確保
背景:AI技術が軍事・経済の両面で影響を及ぼす中、安全性や倫理的基準を明確化する必要がある。
具体的な提案連邦AI政策の整備
AI技術開発と使用に関する統一的な倫理規定を策定。
公的研究機関や民間企業が遵守すべきガイドラインを明示。
AIの安全性評価基準の導入
商務省やエネルギー省が中心となり、AIシステムの安全性を評価する基準を開発。
軍事利用におけるAI技術の暴走や意図しないリスクを軽減。

6. 消費者製品とAIの安全性
背景:中国製のAI搭載製品(例: スマートデバイス、監視カメラ)が米国市場で普及しており、セキュリティリスクが懸念される。
具体的な提案中国製品の輸入規制
自律型ロボットやネット接続型デバイスなど、AIを搭載した消費者製品の輸入を規制。
産業用バッテリーやインフラ製品にも輸入制限を導入。
リコール権限の強化
米国消費者製品安全委員会(CPSC)に、AI搭載製品のリコール命令を即時発動できる権限を付与。

上記提言書をもとに要約

次期政権となるトランプ陣営は元々選挙中からこの策定を行っていました。

そして2023年に布告されたAI規制については廃止にする可能性が高いと言われています。

今回の一連の動きを大雑把にくくると、AI戦略もより政治的な思惑が濃くなることを示唆しています。

AGIやシンギュラリティの議論は知的好奇心としてはくすぐりますが、地政学的な視点も不可欠になっていくでしょう。

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