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体内のミクロ医師—ナノロボットが拓く治療の未来

以前に、シンギュラリティの伝道師レイ・カーツワイルの最新作(The Singularity Is Nearer)を紹介しました。

最新作は、前作を最新の情報で解像度を高めたという雰囲気です。それほど2005年の作品が未来を正確に予測していたとも言えますね。

その中でカーツワイルが注目していたのが、体内を動くナノサイズのロボットです。それを活用することで、患部へのピンポイント治療が可能になり、寿命延長に貢献します。

ただこれは未来の願望ではなくすでにいくつか実験レベルでは進められています。その1つが最近報道されていたので紹介します。

今回はウサギを使った実験です。

血液の中に潜り込ませて患部に移動して融解する、まさに上記を具現化する動きを見せます。

このナノボットは、外科医がカテーテルから注入して動脈瘤血管にまで潜り込ませることができます。つまり出血を伴う手術が不要なわけですね。カテーテルを長く伸ばしてマジックハンドのように操作する治療法もありますが、なかなか大変なスキルを要するわけです。

それが、単に血管に忍び込ませれば、あとはロボットが移動してくれるわけです。

この魔法のようなロボットの中身について。

磁気に反応するコア部、動脈瘤を治療するトロンビンと呼ばれる凝固剤、および軽く加熱すると溶けて薬剤を放出するコーティングで構成されています。この磁気を使って誘導するわけですね。そして患部に到達すると、そこに外部から熱を与えることで溶かす(薬剤を投入)ことでピンポイント治療が実現できるというわけです。

見た目ですが、上記記事に写真があるので貼っておきます。

出所:上記記事内の図

上記はアップなのでサイズ感がわかりにくいですが、名前の通り直径 295 ナノメートルです。上記記事によれば、一般的なウイルスの幅は約 100 ナノメートル、ほとんどの細菌は 1,000 ナノメートルのスケールなので、まさに体内を駆け巡るミクロサイズです。

今回数匹のウサギに対しては成功してますが、一部課題も残っています。

例えば出血のリスクや、処置で動脈瘤が部分的にしか修復されないなどの問題が残っており、もしかしたら今後も血液凝固阻止剤を無期限に服用する必要があるかもしれないとのことです。

まだ人間への臨床はもう少し先にはなりそうですが、とはいえ基本技術は整っているので、あとは改善、そして量産という次のステージなのかなと感じました。

他にもナノボットの研究は進んでいるので、またどこかで紹介したいと思います。

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