意識の統合情報理論とクオリア
以前に、意識の解明についての科学論争(賭け)について触れました。
後半に、2つの理論について触れてます。
そのうち、「IIT(意識の統合情報理論(integrated information theory))」についてもう少し補足しておきます。
意識は、我々が主観的に経験して明らかな概念でが、しかるがゆえに客観性を重んじる自然科学という俎上に載せるとややこしくなるわけです。
しかも、「明らか」とはいえ、厳格に言語化されておらず、意識の定義から入る必要があります。
このあたりは、AI(人工知能)の成り立ちを連想してしまいます。
AIは、1956年のダートマス会議という名のワークショップ開催を開くための企画書(要はスポンサーに出資を募ってもらうためのもの)で、ジョン・マッカーシーがえいやで名付けた宣伝文句です。
IITでは、主観的な意識体験を「クオリア」と呼び定量化しようとしました。
確かに、定量化できるなら客観的に議論できそうです。
IITの提唱者は、ジュリオ・トノーニという神経科学者で専門は意識と睡眠です。
トノーニは、2004年にIITを提唱しました。
ポイントは、名前の通り「統合」にあります。
トノーニの専門である「睡眠」を例にとります。この時は我々は「意識」がないといえます。
ただ、睡眠時も脳は局所的に活発(特にREM睡眠時)に活動していることがわかってきています。
つまり、「脳の活動度合い」と丸めて語るのは難しいわけで、そこで「統合」を持ち込みました。
脳はモジュールのような構造になっており、言語を読み解く部位、感情をつかさどる部位、といった形で役割分担しています。
これらの各部位は必要におうじて連携するのですが、この連携度合いを定量的に測定することで、その値をΦ(ファイ)と名付けます。
つまり、IITでは、意識という従来現象として扱ってきたものを、構成、情報、統合、除外という視点で正確に定義し、それが機能する詳細な数学的フレームワークを開発しています。(しようとしています)
現時点では、2014年にVer3.0と称した発表があり、下記でその説明を読むことができます。
各モジュールを計測する定義とそのつながりを確率手法を使って定式化しようという試みはありますが、まだ完成には至っていません。
ただ、意識という心理現象を自然科学に引き込む定量的なアプローチとしては、(賭けをした)コッホをはじめとして一定の支持は集めています。
念のため触れておくと、Φは脳全体でなく部位ごとで計測しようとします。例えば小脳よりも大脳新皮質のほうがΦの値は高くなります。
Φが高いということは、それだけ意識化に影響を与えている、ということで、こうすると睡眠時の活発の動きでも無意識と解釈できそうです。
今後も大きな発展があったら紹介してみたいと思います。