洞窟が語る交雑の歴史:現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人
現生人類は大体20-25万年前に誕生したと推定されています。
ただ、独立した進化の道を歩んだわけではありません。
21世紀に発達した古代ゲノム解析で、我々現生人類にはネアンデルタール人やデニソワ人とDNA含まれている、つまり交雑していたことも明らかになりました。過去記事を載せておきます。
最新の研究結果で、人類と同類種の接触について触れた記事をみつけたので紹介します。
現生人類2,000人とネアンデルタール人3人、デニソワ人1人のゲノムを使用して、過去25万年間のヒト属グループ間の遺伝子の流れを地図化したのがこちらです。
要点を書き下しておきます。
・現生人類は約60万年前にネアンデルタール人の系統樹から分岐し、その後約25万年前に現代の身体的特徴を進化させた。
・約 20 万~ 25 万年前の最初の接触の波、10 万~ 12 万年前の別の接触の波、そして約 5 万~ 6 万年前の最大の接触の波があった。
・ネアンデルタール人は想定よりも人口が少なく(数千人)、多様性をもたらすDNAは多くが現生人類由来であることが判明。
また、別の研究発表によると(こちら)、ネアンデルタール人が脳の発達に関わる遺伝子を含むゲノムの10%を現代人から受け継いだそうです。
つまり、お互いの進化に相互影響を与えて、多様性の少ないネアンデルタール人は絶対数が少ないことから自然消滅していったシナリオが現実味を帯びてきます。すくなくとも過去のイメージにある現生人類との物理的な闘争に敗れた、ということはなさそうですね。
そして第三の人類「デニソワ人」についても最近新しい発表がありました。(こちら)(東ロシアに位置するデニソワ洞窟で見つかったのが名称の由来)
約20万年前に洞窟で見つかった人骨がデニソワ人であることが判明した、ということで、従来よりも古い時代から生存していたことが分かりました。
大体40万年前にデニソワ人はネアンデルタール人と分岐しましたが、これらも交雑は行われたようです。
興味深いのがある地域での洞窟における採掘結果です。
ある時期まで滞在していたデニソワ人は、ネアンデルタール人に一時期置き換えられました。
約6万年前には、デニソワ人がその地域に戻ってきて2つのグループは洞窟内で出会った可能性があります。
例えば、5万年以上前の女性の骨片のDNAから、彼女の母親はネアンデルタール人で父親はデニソワ人だったことが判明しています。
そしてその後、DNAと化石の両方から、現代人がその洞窟に住み着き、デニソワ人とネアンデルタール人は姿を消したことがわかります。
まさにさまざまな種類の人類の交差点のような場所ですね。今回発掘されたデニソワ人のDNAにはまだ未確認のものあり、近いうちにDNAを公開するようなので、新たな発見が行われるかもしれません。
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