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重力波はまだまだ新鮮な話題
重力波は過去にも何度か取り上げてきました。
念のためですが、重力波は時空のゆがみから生じるもので、あまりにも微弱がゆえにアインシュタイン本人も実測するのは難しい、と予測していたほどです。
それが100年後に観測に成功し、いまでは珍しくなくなりました。
そして今回、史上初めて「低周波」重力波が観測されました。
(タイトル画像も下記記事内の画像。Credit:NANOGrav コラボレーションの Aurore Simonnet))
従来発見されたものは、相対的にはブラックホールやそれに近い形態の中性子星同士が衝突した結果によるものです。
今回の低周波はそれに比較して「マイルド」な現象で、より微小なさざ波であるため実測としては初めてとなります。
周波は、波の反復する幅(波長)を逆数で計算するため、低周波ということは波の周期が長いことを意味します。
そして今回の周期を長さでいえば、実に数兆マイル(1マイル≒1.6km)に及び、光の速さで我々の所属する天の川銀河をも超えかねないレベルです。(記事内では、最大の長さでおとめ座銀河団に相当する1億光年まで)
今回の観測プロジェクトは、NanoGravと名付けています。
活躍したのは、下記3つの観測所です。
・プエルトリコのアレシボ天文台(現在は老朽化で運用終了)
・ウェストバージニア州のグリーンバンク望遠鏡
・ニューメキシコ州の超大型アレイ
NanoGrav は上記の観測データを処理し、天の川銀河内の 68 個のパルサー(定期的に脈動する中性子星。下記のそのイメージ図)を、全体の大きさに匹敵する巨大な重力波アンテナとして機能しました。
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既に運用終了した観測所があるように、データ自体は過去何年にもわたって得て、今回はそこから初めて見つけた次第です。
今回の発見の、学問上の意義について。
この発生源はマイルドなものといいましたが、宇宙初期の超大質量ブラックホール連星であろうと考えられています。
ブラックホールは、一般的には天体がエネルギーを放出した後の1つの最終形態です。
ということは、この連星がどのように作られたのかが解明できれば、宇宙初期での挙動への手がかりになるというわけです。
今回の3つの天文台は、その1つが運用終了しましたが、それに代わる新しい仕組みを考えようとしています。
重力波を使った観測は、「重力波天文学」と呼ばれており、今回の発見もまだまだまだ一里塚だと思います。
これからも、新鮮なウェーブを届けてくれることを今から待ち望んでいます。