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OpenAIが科学分野へ本格参入 - 生命科学ベンチャーとタッグを組み長寿研究へ

前回、OpenAIの経営方針が営利重視へシフトし、特にB2G(Governance)分野に注力していることをお伝えしました。

この営利重視の流れの中で、最近もうひとつ重要な発表がありました。それは生命科学分野への進出です。

OpenAIは、新言語モデル「GPT-4b micro」の開発を通じて、若返り研究に取り組むレトロ・バイオサイエンシズ(以下、レトロ)との協業を発表しました。レトロは「健康寿命を10年延ばす」という野心的な目標を掲げているバイオテック企業です。

興味深いのは、この協業の背景にあるサム・アルトマンCEOの存在です。アルトマンはAGI開発以外の分野でも個人として積極的な投資を行っており、その主要な投資先は「次世代エネルギー」と「長寿研究」です。

彼はスタートアップ支援で有名なYコンビネーターの出身で、その人脈を活かしてレトロの立ち上げにも関わったとされています。

レトロが取り組む「リプログラミング」技術は、山中伸弥教授が発見した4つの遺伝子を用いてiPS細胞を作製する手法がベースとなっています。現在の課題は、細胞の育成プロセスの成功率が約1%と低いことです。今回のOpenAIとの協業では、生成AIを活用して有望なタンパク質を設計し、この成功率を向上させることを目指しています。

最新の報告によれば、既に一定の成果が出始めているとのことです。ただし、この分野では巨大な資本を持つアトラス社も参入しており(主要投資家はAmazon創業者のジェフ・ベゾス)、長期的な研究開発競争が予想されます。

科学的なアンチエイジング研究にOpenAIが参入したことは、テック業界の新たな潮流を示唆しています。今後、Apple、Microsoft、Googleなど、いわゆるMagnificent 7と呼ばれる巨大テック企業も同様の動きを見せる可能性があります。

その意味で、OpenAIの今回の取り組みは、テクノロジー企業によるバイオテック分野への参入の試金石となるでしょう。

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