万物理論に魅せられて:偉大な科学者たちの後半生
1つの理論で森羅万象を語る「万物理論」というロマンがあります。
過去にも少しだけ、その候補である「超ひも理論」について触れました。
ただ、そこに足を突っ込むとラビリンスに迷い込むリスクもあります。歴史的にはアインシュタインもその一人で、文字通り亡くなるまで追い求めていました。
そんな万物理論に魅せられて、不遇な晩年を迎えた人を下記の記事で紹介しています。
その一人として、アインシュタインにとって重要な盟友となったアーサー・エディントンがいます。
この方は以前にもふれたので過去投稿を載せておきます。
一般相対性理論の証明への貢献後は、恒星研究などでも名を馳せました。
ところが晩年に、「万物理論」に近い「基礎理論(Fundamental Theory)」と自称する研究に没頭します。
ざっくり言うと、自然定数間の比率には偶然ではない一致、つまり隠れた法則が潜んでいるという研究です。
こういった思い込みは「数秘術」とも呼ばれ、占いとかでよく見かけます。いわゆる偶然のこじつけですね。
その決定打が、微細構造定数(電磁相互作用の強さを表す物理定数) に関わるエピソードです。以下はWikiから借用。
当時のこの値の測定結果は 1/136 に非常に近く、エディントンは、この値は正確に 1/136 になるべきものだと主張しました。
その後、観測技術が進歩して測定結果が 1/137 により近い値をとるようになると、エディントンは理由を変えて、微細構造定数は正確に 1/137 になるはずだと主張しだします。
この 1/137 という値は「エディントン数」と呼ばれ、この時期には多くの研究者は彼の考えを真面目に受け取ることをしなくなったそうです。
ちなみに、現在の微細構造定数の測定値は 1/137.035 999 76(50) とのこと。
このエピソードを聞いて思い出したのが、これもアインシュタインをして天才と言わしめたディラックです。こちらも晩年は同じような自然定数に関する研究も行っていました。過去投稿記事を載せておきます。
ようは、自然定数の比率がどれも同じで意味がある、というはなしです。
これは信じている研究者もいますが、あくまでマイノリティです。
今回とりあげた3名は全盛期が偉大すぎるので、どうしても残念な晩年に映ります。
ただ、最後まで野心的なチャレンジに挑戦したこと自体は、素直に素晴らしいと思います。
晩年に意外な研究テーマに没頭する偉大な科学者は結構いるので、また紹介してみたいと思います。
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