生成AIと科学:粒子加速器での人間との協働
世の中の物質の最小単位を探る「素粒子物理学」。この分野でも生成AIの活用が模索されています。今日はこちらの論文を紹介します。
ようは、
加速器の補正作業で生成AI(LLM)は既存アルゴリズムには及ばないが、一部科学者の仕事をサポートする可能性は見せた、
というはなしです。
まず、粒子加速器でやってることは、陽子や電子といった素粒子をビーム状に加速してぶつけることで高エネルギーを産み、そこから発生するふるまいから超ミクロの世界を予測します。
そのビームの補正などが主なチューニングとなっており、従来は人的な判断でベイズや強化学習(広義ではこれもAI)アルゴリズムを使っていました。
それを生成AIを操るLLM(大規模言語モデル)で自律的に操作できないか?というのが今回のテーマです。
結論から言うと、まだ既存より精度は悪いという結果でした。
ただ、目標値の説明やタスクの複雑な動作原理の解釈に役立ち、人間のオペレーターを支援する可能性を示したということです。
例えば、
「(加速手段としての)四重極磁石の強度を増加させると、ビームは水平方向に収束し、垂直方向には拡散します」
といった具体的な動作メカニズムをモデルが説明してくれるので、非専門家でも理解が促進されます。
もっと具体的な例として、
例えば、「以下の設定を採用してください」として具体的な数値設定を提示します。
{ "Q1": -14.30, "Q2": -9.70, "CV": -2.55, "Q3": -8.10, "CH": -5.21 }
そしてその理由を自然言語で次のように説明してくれます。
「Q1を若干減少させたのは、ビームの水平位置を下げるためです。他の四重極磁石の設定は、縦方向位置と集束性を維持するために前回の値を維持しました」
読む限りはいい感じです☺
今回は最先端研究所での作業なのと結果としては従来方法より劣ったので仕方がないですが、大学などの教育機関で活用できそうです。
以前に、生成AIが論文をゼロから作り上げる衝撃のLLMを紹介しました。
今回の論文では、生身の人間による機械的な作業をサポートして、より創造的(研究テーマを考えるなど)な時間をとれるという意味で、とても意義深いと感じました。
従来からデータ解釈ではAIを使うのは普通に行われていましたが、実験など身体を伴う作業でもAIの活用領域が広がっていきそうですね。