人新世(ひとしんせい)の証拠をつかめ
地質学では、地球全体での時代に応じた名称を付けます。
なじみ深いところだと、恐竜が全盛期を迎えた「ジェラ紀」(ジェラシック)は映画の影響もあっておなじみだと思います。
地質学のルールとして、代→紀→世の順で細かく区分されます。
住所で言う県→市→町みたいなイメージです。
それで現代ですが、
新生代→第四紀
までは明確に定義づけられています。
ではもう少し細かい「世」は今の時代はどう呼ばれているか?
「人新世(ひとしんせい)」
と呼ばれることが増えましたが、これがまだ学術的にはあいまいさが残って議論が続いています。
今回は、その提唱の経緯と現時点での証拠集めの話をしたいと思います。
1つ前、または現時点でも人新世に反対の方は、今の時代を「完新世(かんしんせい)」と呼びます。
大体1万年前に氷期が終わって温暖期に入った時期を指します。このようにあくまで地球規模の変動で決められます。
きっかけとなったのは2000年の専門家会議で今でも語り草になっています。そこで、ノーベル化学賞も受賞したパウル・クルッツェンさんが、完新世という語が現在を表現するには不適切ではないかと発言し、一気に専門家の間でその議論が広まったそうです。(言葉自体は20世紀から別の方が提唱)
ただ、当然自然科学の1分野ですので、それを表す「証拠」が必要です。
そして今その証拠を集める候補地と調査が進められており、つい最近その最新情報が一般メディアにも載っています。
ようは、
世界各国12か所を候補に、1950年代以降に人類の影響で変質した証拠を探している、
という話です。
今回の「人新世」が従来と異なるのは、「人類の活動による影響」で地球規模の気候変動がもたらされたのではないか? というものです。
その根拠の1つとして、「グレート・アクセラレーション(大加速)」と呼ばれる、1950年代以降に人類が地球に与えた急激な変化です。
その他にも、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)という言葉も有名です。
それを確かめる手段がまだ確たるものはなく、上記サイトで紹介されたケースでは、サンゴに含まれるプルトニウムや放射性炭素が1950年代以降に急激に増加したというものです。
いわずもがな人類の核実験などの影響を指しています。
意外なのが、世界各地12の候補の1つとして、日本の大分県別府市に属する別府湾です。
こちらについては、こちらの記事が詳しく紹介しているので引用します。
ようは、
別府湾海底の堆積物で、放射性物質やプラスチック汚染などを計測できる可能性がある、
という話です。
もう1つ分かりやすく書かれた図を引用しておきます。
まだ調査途中で何とも言えませんが、但し難しいのは承認プロセスです。
国際的な専門機関に4つのプロセスで承認を得る必要があるそうで、上記サイトでもその可能性については玉虫色な表現です。
一番難しいのが、今回は歴史上はじめて人為的な影響と解釈したことで、それを測る物差しがないことです。
個人的には、その尺度を標準化した後に調査したほうがよいのでは?と感じはしますが、元々のきっかけもハプニング的な発言でゲリラ的に広まったので、複雑な事情があって今のような混沌状態になっているのでしょう。
つい最近もこんなニュースが流れており、ムムムと唸ってしまいました。
今の時代を何と呼ぶにせよ、それによる地球規模の被害が予測出来うる以上は、少なくとも世界的に議論を呼ぶきっかけになればいいなと思います。