言語処理機構の定説が数十年ぶりに更新されるかも
人間が知能を獲得する上で一番重要なものは、個人的には「言語」だと思っています。
それによって、一人の知恵が集団に伝わり、さらに交換することで知能が磨かれるのだろうと想像しています。
そんな「言語」能力ですが、ある程度そこに対応する脳の部位がわかっていましたが、それを数十年ぶりに変更を迫る研究結果が発表されました。
ようは、
脳で言語を処理する部位は一次聴覚野(ちょうかくや)の後方でなく前方であることが分かり今後の治療に影響をあたえるだろう、
という話です。
一次聴覚野、という耳慣れない用語がありますが、下記の場所です。もう少し大きなくくりでいえば「側頭葉」と呼ばれる箇所です。
ようは、ここで耳から入った音声が一次処理されて、大脳皮質に渡されます。
その過程で我々は言葉を感じ・考えたりすることができるわけなので、重要な中継器ですね。
1990年代から、聴覚野のなかで後方であろうという説が有力だったそうです。
今回の実験で何が違うかといえば、測定機器の違いです。
fMRIを使って脳内の神経細胞の動きを可視化したのですが、細かくはfMRI-RA(rapid adaptation)というテクニックがポイントのようです。
冒頭記事ではその内容までは触れずに、それが音声処理にとってより感度が高くなるようです。
1990年代に普及したfMRIが、さらに進化しているのは興味深いです。どこかでこの進化だけを追求したいぐらいです。
もう1つ、少々脱線するかもしれませんが、学習データも今後脳研究に貢献するかもしれません。
以前にも紹介したかもしれませんが、2023年にこんな興味深い論文が発表されています。
ようは、
画像生成系AIと組み合わせて脳内画像予測の質が上がった、
という話です。
何が言いたいかといえば、今後被験者の脳内データが蓄積されていくと、より生成系AIがリアルな脳内データを生成することができるはずです。
そしてそれが今後の脳研究に貢献する可能性を秘めているのではないか?と期待しています。
元々は生成系AIの源流はLLM(大規模言語モデル)で、もっといえば我々人類がインターネットという共通の箱に言語で出力した集合体です。
そこから、もし今後更に源流にあたる脳内処理の予測に還元される日がくるとすれば、なかなか奇妙な構造です。
LLMのトップランナーにあたるChatGPTは、有名税もあるでしょうがその研究が暴走しないようにコントロールしよう、という動きすら出ています。
一方で、ユーザ視点ではピークを越えてきているようです。
やや初期は過熱期だったのかもしれませんが、性能自体はむしろまだ計り知れず、脳の研究など今後さらに人類全体の知識を底上げする可能性をひめていると思っています。
脳科学と人工知能、その目的はいつしか別れてしまいましたが、LLMやfMRIなどの新しい発明で再接合しようとしている、改めて面白い時代に突入したなぁと思います。