生命はエネルギーの不均衡で生まれた
前回、マクスウェルの悪魔が(我々含む)生物の細胞膜に存在していた、というなかなか刺激的な話を書きました。
この細胞膜を貫通する輸送体の活躍で、生命として秩序だった状態を維持できるわけです。
このような仕組みが果たして自然から生まれたのか?
「YES」
と唱える科学者の一人にニック・レーンという方がいます。
和訳されている下記著作を参考に、生命誕生の仮説を紹介します。
最古の生命体は、有機物(炭素を含む化合物)が合わさったものと推測されています。
そして有機物は無機物(炭素を含まない化合物)から生まれたと考えられています。
生命の条件として、生物学の視点では下記の3つが知られています。
古代の生命は、どれかの機能を単一または同時に獲得したわけです。
現在でもその答えは出ていないわけですが、ニックはまず「不自然なエネルギーの流れ」が有機物誕生のきっかけとなった、という仮説を唱えます。
前回紹介した元物理学者シュレディンガーの「負のエントロピーを食べる」という化学的な作用が地球上のどこかで発生した、ということですね。
話を単純にするために、
「壁を隔てた区域で、ある無機物→ある有機物へ化学反応が進むのか?」
という問題と設定します。
具体的には、無機物として古代から存在していた$${H_2}$$ と $${CO_2}$$ から $${CH_2O}$$(ホルムアルデヒドと呼ばれる有機物)となるか、とします。
結論だけ書くと、
2つの区域で「酸性度」に差があると起こりえます。
酸性度は、pH(「ペーハー」と呼称)で定量化され、水素から電子を放出した水素イオン($${H^+}$$)の濃度を指します。砕いて言えば「電子が分子とつながりたいか離れたいかを表す度合い」です。
つまり、壁を隔てた区域で、片方は水素から電子が分かれたがり(アルカリ性)、もう片方は水素とよりを戻したい(酸性)、という状態です。
すると、
Step1. 酸性度が低い区域(アルカリ性)→ $${H_2}$$から電子が放出され$${H^+}$$へ
Step2. 酸性度が高い区域(酸性)→ 電子を吸収して$${H^+}$$ と $${CO_2}$$ が$${CH_2O}$$(ホルムアルデヒド)へ
という反応が壁を経て行われるわけです。
ちなみに、この壁は電子を通す性質が必要ですが、硫化鉄(FeS)であればOKです。
今回はホルムアルデヒドだけに絞りましたが、同じような考え方でメタンなどの有機物も生成され続けます。
何となくご都合主義的に聞こえるかもしれませんが、果たして地球の古代にこんな自然環境があったのか?
その候補が「アルカリ性熱水噴出孔」で、過去にも紹介した「ロストシティ」と名付けられた場所です。
今回はあくまで、無機物から有機物の生成、というピンポイントに絞っています。
生命に至るはじめの壁(無機物→有機物)は、このような「エネルギー勾配(偏り)」から生じたという仮説でした。
興味持った方はぜひ元ネタ著作をポチって見てください。非常に歯ごたえのある大作です☺
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