「意識」への科学的な挑戦
科学でも取り扱うこと自体に問題がある分野がいくつかあり、「意識」はその1つです。
厳格には1つでした。今では脳の観測技術が進歩したおかげで、正式な学問として研究が進められています。
そんな「意識」に関する面白い研究成果が日本の理化学研究所から発表されました。
要は、
内省のプロセスは、各部位での局所的な情報処理が統合されて評価されていることを確認した、
という話です。
内省はよく「メタ認知」という言葉でも表現されます。
砕いていうと、自身が脳内で知覚・思考した結果をもとに評価して判断する、というプロセスです。
まず、「意識」がどう生じるのかについてはまだ厳密には解明されていません。
ただし、いくつか有力な候補があり、その1つが「意識の情報統合理論」と呼ばれるものです。今回の実験結果もこの理論を支持するものです。
それによると、脳は複数の部位が別の処理をして統合化されたときにイメージされうるもの、と考えられています。
初めて聞いた方は、なかなかすぐには腹落ちしないかもしれません。こんなにクリアに自分が意識を持っていることは分かっているのですから、特定の個所がそれを担っていると考えたくなると思います。
まだこの仮説が証明されたわけではないのですが、1つだけ添えると我々の脳内処理では結構な割合で「無意識」の処理が行われています。
もっと言えば、我々が「意識的」に判断して行動してると思っているものはわずか、または存在しないかもしれないというなかなかショッキングな論争もありました。
これはよく「自由意志」という論点で扱われます。例えば下記の記事ではそれについて分かりやすく説明されています。
歴史的な実験としてよく知られているのが、
我々が意識的に行動したタイミングより少し前に、脳が反応(電気信号の確認)している、ものです。
上記記事は、いやいや完全にそうとは言い切れないよ、ということを言ってます。
ただ、そういう言い方をしなければいけないほど、我々が気づかない脳の処理によって意思決定・行動が支配されていることはある程度確からしいとされています。
まだ合点がいかない方は、例えば熱いヤカンをうっかり触ったときを想像してみてください。
「熱い」と思う前に手を離す、つまり意識の前に運動が先立つことに納得してもらえると思います。
それと近いことが、結構な割合で日常的に起こっていると思えばよいでしょう。
話を「脳の情報統合理論」に戻します。
上記のように、我々の意識も無意識で行われている各知覚(または記憶によるパターン処理)が行われており、それが後部頭頂葉といわれる個所で統合されたときに心的イメージとして発露されている、ということです。
このあたりの仮説に至った軌跡を含めて、その考案者にあたる精神科医が一般向けに出版していますので、1つだけ紹介しておきます。
特にまだ納得しない、という方にお勧めです。
仮にこの説が正しいとすると、今後脳内での統合に至る経路が解明され、それは翻って精神疾患への治療方針にも影響を与えます。
こういったことが可能になったのも、今回の実験で用いられたfMRI(要は脳の血流をダイナミックに観測できる仕組み)という観測技術の進歩によるものです。
常に理論と実験は、二人三脚でお互いを刺激しあいながら科学技術の進歩に貢献してきました。
我々人体の、ある意味究極の謎ともいえる「意識」が科学的に解明される日がくるのも遠くないかもしれません。
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