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鳥はそんなに甘くない

歌っているかのような鳥のさえずりは甘く心地よいものですが、実は鳥類は人類にはない能力を持っています。

その中で有名なのが
渡り鳥がいかにして迷子にならずに超長距離を移動できるのか?
です。

人間だと、昔はコンパスで方位を調べ、今だとGPSを使いますね。
渡り鳥によっては数万kmも移動する種もあり、その飛ぶ能力もそうですが、そのナビゲーションシステムが以前より謎とされていました。

色々と仮説がありますが、なんと「量子論」の効果を体内で発生させて「コンパス」の役割を担わせている、というのが今の有力なものです。

ようは、
目で青色光を受けて電子ペアを作って、そのスピン状態で地磁気(方位)を感知している
という話です。(その他の説も紹介)

この解明は物理だけでなく生命科学の発展も貢献しています。遺伝子配列を解読できるようになって初めて、青色を受容するたんぱく質の発見に成功しました。まだ研究は進んでいますが、結構多種で古くから存在するようです。

鳥の網膜には、「クリプトクロム」と呼ばれるたんぱく質内に、青色の可視光を吸収する色素が内蔵されていることが分かりました。
今まで隠れて見つけられなかったので、クリプト(隠された。暗号化された)クロム(色素)と名付けられました。
人間社会でも、クリプト(暗号技術)業界はいろんな意味で話題ですね。

さて、ユニークなのは、青色光を受信してつくる「電子のペア」です。
これが地磁気との角度によって、お互いのスピン(回転量)を打ち消しあったり強め合ったりし、その度合いを検知してコンパスとしています。

このペア間の相互作用が「量子もつれ」と呼ばれる量子論特有の現象です。
過去にも投稿しましたが、情報伝達が「光速を超えている」ため通信領域でもその応用が期待されています。

人類が挑む最先端技術を、既に自然な能力として体得しているのは、文字通り超能力ですね。

ただその逆に、鳥類が(人類が持っているけど)持っていない能力があります。

それは「甘味」を感じる味覚です。

ちょうど最近それに関する面白いニュースが流れていました。

ようは、
鳥は独自の戦略で甘味を検知して必要な糖分を確保して進化している、
という話です。

味覚の原理は比較的近年に解明され(誤解が長年続きました)、今は舌内にある味蕾(みらい)細胞に、その受容体があることがわかっています。

その味蕾内に、他の動物種には大体ある甘味を受容する機構が、鳥類にはないわけです。なぜか?

シンプルに言えば、鳥のご先祖様である「恐竜(特に肉食)」が必要とせず退化した、という説が有力です。

ただ、例えばハチドリなど馴染みの鳥が、花の蜜を吸う映像を見たことがある人は多いと思います。

これは味蕾と別に受容する部位があるのだろう、ということで上記の研究につながり、遺伝子配列を制御して実験を繰り返すことで、その場所を特定することが出来ました。
これによって、甘味を受容するたんぱく質を発達させて独自の進化を遂げた、といえそうです。
おそらくは、冒頭に触れた食物探索のための長距離移動で、糖分を蓄えておく必要性に駆られてのことなのかもしれません。

鳥類にかぎったことではありませんが、生き物には、人間が持っていない(か気づいていない)能力と、そしてその背景には最先端理論がひそんでいるという1つの例です。

ただ、特に春の鳥のさえずりは、そんな面倒なことは忘れてその美声に浸りたいと思います。

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