合成生物がついに「進化」を発現!
人工的に生命を創る「人工生命」(またはALIFE)、コンピュータ科学や生命科学の分野を基軸に発展が続いています。
特に、生命科学では「合成生物学」という呼び名も普及してきました。その歴史について過去触れたので引用します。
上記でタイトル画像でも登場した、ベンターが創立した研究所が、ついに「進化」を達成しました。
ようは、
2010年に成功した合成生物(細菌)を時間をかけて成長させると、進化のようなふるまいを見せた、
という話です。
「進化」というやや抽象的な言葉がありますが、砕いていえば「変化適応するために、突然変異で多様な細胞・生命を生み続ける」という機能です。
今回約300日(細菌時間では2000世代相当)ほど見守った結果として、実際に高い確率で突然変異を起こし、初期よりもたくましい(この定義はちと不明)細胞も出現したそうです。
ということで、人工的に作製した生命で「進化」を達成した、というわけです。
念のため、今回対象の生命体について補足しておきます。
あらゆる(地球内)生命体は遺伝子を塩基というコード(暗号)としてそのダイナミクスで生命的な挙動をします。
そのコードが比較的シンプルな細菌(大体数十万の塩基対)として、マイコプラズマ・マイコイデスを選択し、10年以上の歳月をかけて(生命要素で必須の)細胞分裂まで成功します。
興味のある方は、そのバージョンを下記の動画で閲覧できるので覗いてみてください。
今回の実験で使ったのは、細かくは上記動画のさらに最新版(JCVIV-sys3B)です。
今回の発表では、変異した遺伝子を特定しましたが、それがどういった機能をもつのかはまだ不明とのことです。
このプロセスおよび役割が明らかになると、病原体の治療や、共生化する過程の理解、もっとふくらますと生命の起源への探求に期待が持てます。
元々ベンターはヒトゲノム計画で、AI(大量データからの機械学習)を導入してそのプロジェクトの前倒し(国家側との和解)まで影響を与えた人です。
今回、おそらくは史上初めて人の手によって物理的(コンピュータシミュレーションではなく)に「進化」を発現させたことで、加速度的に合成生物学の研究が進行するかもしれません。
同時にそれは、利用方法について倫理的な観点での国際的議論(研究にかかわるすべての組織)の必要性も高まると思います。
すべての最新科学技術が踏む道ですが、人類の幸福につながる健全な「進化」を望みます。
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