生成AIと宇宙との不思議な邂逅
前回、生成AIのデファクト技術”Transformer”が脳の記憶方法に酷似している、という話をしました。
今回はその第二弾で、「脳」ではなく「宇宙」です。
物理学者の橋本幸士氏らが論文で発表しています。(査読前)
この方の専門は「超ひも理論」で、一般向けに分かりやすい著作で知られています。1つだけ著作を載せておきます。
論文の中身は、正直私には難解すぎるのですが、自分なりに砕いて骨子を書いておきます。
いくつか論文の前に下ごしらえが必要です。
まずは、Transformer。 1つ1つのトークンを離散的(デジタル)にAttentionを張る仕組みがポイントでした。
これを連続的(アナログ)に変換する手法のなかで、高い精度を誇ったニューラル常微分方程式(以下Neural ODEと略称)というものがあります。元論文はこちらでアクセスできます。
これは2018年に発表されて話題を呼びました。解説記事を1つ紹介しますが、最優秀論文にも表彰されたようです。(ちらほらとこの手法を生かした記事を見かけます)
このNeural ODEを、物理学の「ゲージ対称性」の概念を用いて解釈しようとした、のが論文の前菜です。
ゲージ対称性とは、物差し(ゲージ)を理論横断的に変換することができる性質のことです。
もともとはアインシュタインの同僚でもあった数学者ヘルマン・ワイルのゲージ理論が元祖です。
上記記事内から、物理学の万物理論へ連なるフローチャートを引用します。
なんとなくこれで、橋本氏の専門「超ひも理論」とのつながりが見えてきました。「ゲージ対称性」は物理学を統一(その候補が超ひも理論)する手法として必要不可欠な道具です。
参考までに、超ひも理論について触れた過去記事を貼っておきます。
この前菜を踏まえて、この論文のメインディッシュです。
このNeural ODEにおけるゲージ対称性は、アインシュタインの一般相対性理論(別名 重力理論)で基本的な役割を果たす時空間の微分同相性(diffeomorphisms)で説明できることを数学的に示しました。
今の宇宙論の基礎にあたる一般相対性理論では、時空間がぐにゃぐにゃゆがむ幾何学(非ユークリッド幾何学)を取り扱います。
その時空間を点変換して微分しても対称である性質を「微分同相性」と呼ぶようです。(この辺りは相当無理して書いてますので、ちゃんと知りたい方は専門書へ)
ということで、伝えたいことを改めて書くと、
宇宙の基礎理論とTransfomerの連続化に成功したNeural ODEは、いずれもゲージ対称性つながりがある、
ということです。
これが何を意味するのかは正直わかりませんが、あえて妄想すると、「宇宙」「生命」「知能」は、その背景に共通の原理が隠されているのかもしれません。
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