アミノ酸の偏りはいつ生まれた?生命の謎に迫る科学の最前線
生命の起源で1つ進展があったので紹介します。
https://scitechdaily.com/nasa-uncovers-rna-twist-that-could-redefine-lifes-origin-story/
上記の参照論文は下記です。
ようは、
地球のアミノ酸構造の偏りは、従来のメカニズムに縛られないことが分かった、
という話です。
端折りすぎで要約になってないですね。
まず、生命には現時点でもいくつか大きな謎があって、その1つが「アミノ酸の偏り問題」です。
アミノ酸には化学的に鏡像構造をもっていておかしくないのですが、なぜか片方(便宜上左手と呼びます)しか存在しません。
その謎の有力仮説として、生命初期のRNAが「アミノアシル化」される過程で物理法則によって偏ってしまうという説があります。
こちらについては右手・左手問題から書いた過去投稿があるのでもっと知りたい方はどうぞ。量子力学が無視できない原子サイズまで解像度をあげることで分かってきたことです。
これだけ聞くともはや決定的と思うかもしれませんが、この実験ではある程度知られているRNAをもとに実験した結果です。
何が言いたいかというと、生命が誕生した古代では、現代の我々が知りえない未知の分子構造を持っていた可能性もあるということです。
ということで、今回は反応の自由度を与えた(どの鎖でも反応しやすくした)リボザイム(酵素の役割を持ったRNA)を設計し、どのように化学反応が進んでアミノ酸を形成していくのかを観測しました。
結論だけを書くと、従来の説と異なり、右手・左手といった偏りは生じませんでした。
ここから言えるのは、今のアミノ酸が左手に偏ったのはそれ以降の時代で何かがあったからだ、という示唆です。
ちなみに、今回発表したグループはUCLAとNASAの共同研究によるものです。
なぜNASA?と思うかもしれませんが、20世紀末から宇宙生物学という言葉を提唱するぐらいNASA内には地球外生命体を研究するグループもあります。
今回の研究成果は、とどのつまり地球特有の生命の偏りが白紙に戻ったとも言え、宇宙からの生命飛来説の後押しにもなります。(ただ、結局はその原因を地球外に渡しただけで進展ではないのですが・・・)
実際に、ハヤブサ2が小惑星から持ち帰ったアミノ酸に近い有機物は、左右偏りがないことが分かっています。詳細は過去投稿で。
ということで引き続き地球での生命の謎はまだまだ残っています。
もっといえば、今回の一連の仮説は「RNAワールド」という仮説のもとに立脚しています。
他にもDNA・たんぱく質・その他のワールド仮説もありますので、それぞれでまた進展があったらまたお伝えしたいと思います。